人文研究見聞録:『旧事紀』による日本神話(神祇本紀)

このページでは、『旧事紀』の「神祇本紀」の現代語訳を紹介しています。

史書の概要などについては「『旧事紀』による日本神話」のページを参照してください


前書

目的・留意点

はじめに、この記事に関する目的と留意点をまとめておきます。

・この記事は、『旧事紀』に記される「日本神話」の内容の理解を目的としています
・原文を現代語で理解できるようにするために、原文を現代語に訳して箇条書きで表記しています
・他書との比較のため、神名はカタカナで表記しており、また「~のみこと」「~のかみ」などの尊称を省略しています
・非常に長い神名の場合、読みやすくするために半角スペースを開けている場合があります
・原文に沿った翻訳を心がけていますが、他の訳文と異なる場合があります(現代語訳の一つと思ってください)
・()で囲んだ神名は、その神の別名とされるものです(複数ある場合は「、」で区切っています)
・()で囲んだ文章は原文には無いものですが、内容を理解しやすいように敢えて書き加えています
・サブタイトルについては独自に名付けたものであり、原文にはありません
・旧事紀はテーマ別に記されており、他書と違って時系列順になっていない部分があります
・当サイトで扱う現代語訳は「日本神話」の部分のみであり、天皇の御代は扱っておりません


神祇本紀

アマテラスとスサノオの誓約

スサノオイザナギの許可を得て、姉と会うために天に昇った
 ・そのとき、ハアカルタマという一柱の神が出迎えて、ミズノヤサカニノマガタマを献上した
 ・スサノオが その玉を持って天に昇ると、大海は轟き渡り、山岳も鳴り響いた
  ・これは、スサノオが荒々しい性格だったためである
スサノオが天に昇ってくる様子を見ていたアマノウズメは、すぐにアマテラスに伝えた
 ・すると、スサノオの荒々しい性格を知っていたアマテラスは、驚いて このように言った
  ・「我が弟は善い心ではなく、きっと高天原を奪おうとする心があるのだろう」
  ・「そうでなければ、自分の治める国を棄ててまで此処に来ようとするものか」
 ・そこで、アマテラススサノオと対峙する準備を整えた
  ・まず、髪を解いてミズラにまとめ、髪を結いあげてミカツラとした
  ・また、裳裾を絡げて袴のようにした
  ・また、左右のミズラや、左右の手と腕に、大きな玉を連ねたミスマルを巻き付けた
  ・また、背には千本の矢の入る靫を背負い、腕には立派な高鞆を付けた
 ・すると、弓を振り立て、剣の柄を握り締め、堅い地面を股まで踏み抜いて土を沫雪のように散らした
 ・そして、勇猛な振る舞いと厳しい言葉でスサノオに詰め寄り、昇ってきた理由を問うた
 ・それに対し、スサノオは このように答えた
  ・「私には初めから穢れた心などありません」
  ・「ただ、父の命令によって根の国に去ることになり、その前に姉に逢っておこう思ったのです」
  ・「また、ここに珍しい宝であるヤサカニノマガタマがあります」
  ・「今は これを献上したいと思うだけで、他意はありません」
  ・「私は遥々遠くからやってきましたが、姉が このように厳しい顔をなさるとは思いも寄りませんでした」
 ・すると、アマテラスは このように言った
  ・「もし、お前が言う通り清い心を持っているとするならば、それをどのように証明するのだ?」
 ・それに対し、スサノオは このように答えた
  ・「ならば、私と姉で誓約(うけい)をしましょう」
  ・「誓約の中で子を生み、その子が女であれば私の心は穢れていると思ってください」
  ・「しかし、その子が男であれば私の心は清いと認めてください」
・その後、二神はアメノマナイを三カ所に掘り、アメノヤスカワを隔てて向かい合って誓約を為した
 ・そのとき、アマテラスは このように誓約をした
  ・「もし、お前に悪い心があるのならば、お前の生む子は女だろう」
  ・「もし、男を生んだのならば、私の子として高天原を治めさせよう」
 ・また、アマテラススサノオに このように命じた
  ・「私の身に付けている玉を お前に授けよう」
  ・「お前は帯びている剣を私に授けなさい」
 ・二神は このように約束して、互いの持ち物を交換した
・まずはアマテラスが、スサノオの帯びていた三振の剣を天真名井で振り濯ぎ、噛み砕いて吹き出した
 ・すると、その息吹の中から三柱の女神が生まれた
  ・十握剣からは、オキツシマヒメ(タゴリヒメ、タギリヒメ)が生まれた
  ・九握剣からは、タギツヒメが生まれた
  ・八握剣からは、イチキシマヒメが生まれた
・次にスサノオが、アマテラスが手と髪に着けていたヤサカニノイホツミスマルを天真名井で濯ぎ、噛み砕いて吹き出した
 ・すると、その息吹の中から六柱の男神が生まれた
  ・左のミカツラの玉を含んで左手に握ると、マサカアカツカチハヤアマノホワケが生まれた
  ・右のミカツラの玉を含んで右手に握ると、アマノホヒが生まれた
  ・左のミモトドリの玉を含んで左肘に付けると、アマツヒコネが生まれた
  ・右のミモトドリの玉を含んで右肘に付けると、イクツヒコネが生まれた
  ・左の手の玉を含んで左足で踏むと、ヒハヤヒが生まれた
  ・右の手の玉を含んで右足で踏むと、クマノクスヒが生まれた
・(このように、二神は誓約にて子を儲けた)
 ・すると、アマテラスは このように言った
  ・「お前が生んだ男神の元となった玉は私の持ち物である」
  ・「故に この六柱の男神は私の子として、高天原を治めさせよう」
  ・「なお、三柱の女神は お前の剣から生まれたため、お前の子とするが良い」
スサノオの子となった三柱の女神は葦原中国に降ろされ、筑紫の宇佐嶋に天降った
 ・その後、北の海路の中に座し、ミチヌシノムチとなった
 ・そして、このような教えを賜った
  ・「汝らは天孫を助け、天孫のために祀られなさい」
 ・これは即ち、宗像君の祀る神である
  ・一説には、水沼君らが祀る神とも云われている
 ・(なお、宗像社に祀られる三女神は この通りである)
  ・オキツシマヒメとは、遠沖に鎮座するタゴリヒメのことである
  ・ヘツシマヒメとは、海辺に鎮座するタギツヒメのことである
  ・ナカツシマヒメとは、中嶋に鎮座するイチキシマヒメのことである


ツクヨミとウケモチ

イザナギイザナミの二神は、火の神のカグツチと土の神のハニヤスヒメを生んだ
 ・この火と土の二神は、ワカムスヒを生んだ
 ・ワカムスヒの頭には桑と蚕が生じ、臍の中には五種類の穀物が生じた
  ・この神がウケモチの神であろうか
・(アマテラスが高天原を治めるようになった後のこと)
 ・アマテラスは天上にて、ツクヨミに勅命を下した
  ・「葦原中国には、ウケモチが居ると聞いている」
  ・「ツクヨミよ、お前が行って見て来なさい」
 ・ツクヨミは天降ってウケモチの元を訪ねた
 ・すると、ウケモチツクヨミを持て成すための食物を生みだした
  ・まず、首を回して陸の方を向くと、口から飯が出てきた
  ・また、首を回して海の方を向くと、口から大小の魚が出てきた
  ・また、首を回して山の方を向くと、口から毛のある動物が出てきた
 ・このように色々な食物を揃えて、机の上に沢山乗せて持て成した
 ・だが、ツクヨミは憤慨している様子で このように言った
  ・「まさに汚らわしく、厭らしいことである」
  ・「お前は、口から吐き出した食物を私に食べろと言うのか」
 ・そして、ツクヨミは剣を抜いてウケモチを斬り殺した
ツクヨミは天上に帰った後に、このことを詳しく報告した
 ・すると、アマテラスは激怒して このように言った
  ・「お前は悪い神である」
  ・「故に、もうお前とは顔を合わせたくない」
 ・こうしてツクヨミは失脚し、以後 昼と夜は分かれて住むようになった
・その後、アマテラスアマノクマヒトウケモチの元に派遣して、様子を見させた
 ・アマノクマヒトが そこに行くと、ウケモチの死体から様々な食物が生まれていた
  ・頭には、桑と蚕が生じていた
  ・目には、馬と牛が生じていた
  ・胸には、黍と粟が生じていた
  ・腹には、稲種が生じていた
  ・臍と尻には、麦と豆が生じていた
  ・陰部には、小豆が生じていた
 ・アマノクマヒトは、これらを全て回収してアマテラスに献上した
 ・すると、アマテラスは人民の食糧を確保できたと大変喜んだ
・その後、粟・稗・麦・豆を畑の種とし、稲を水田の種とした
 ・また、アマノムラキミを定めて、その稲種を初めて天の狭田と長田に植えた
 ・すると、その秋の垂穂は、八握りもあるほど撓って豊作となった
・さらに、口の中に蚕の繭を含んで糸を引く方法を得た
 ・これにより、養蚕が出来るようになって絹織りの業が起こった


天岩戸

アマテラスアマノカキタを御田とした
 ・また、御田を三ヶ所あり、それらは天の安田・天の平田・天の邑并田という良田であった
 ・故に、長雨や旱魃に遭っても損なわれることは無かった
スサノオにも三ヶ所の田が有った
 ・これらは天のクイ田・天の川依田・天の口鋭田という痩地であった
 ・故に、雨が降れば流れ、日照りになると旱魃になった
スサノオは姉神を妬んで、その田に害を与えるようになった
 ・なお、スサノオの行いは とても言いようが無いほど酷いものであった
  ・春には、御田に種を重ねて蒔き、畔を壊し、串を刺し、樋を放り、用水路を壊し、溝を埋めたりした
  ・秋には、御田に天の斑駒を放って田を荒らし、何度も絡縄を使って串を刺し、自分の田にしようとした
 ・また、アマテラスが神嘗・新嘗・大嘗の祭を為す際、新宮の席の下に糞尿を仕掛けた
  ・すると、アマテラスは知らずに席に着いた
 ・このように、スサノオの種々の仕業は一日も止むことは無く、言いようの無いほどである
 ・しかし、アマテラスは それを咎めず、恨むことも無く、親身な気持ちで全て赦した
・その後、アマテラスは神衣を織るために斎服殿(神聖な機殿)に来ていた
 ・すると、スサノオは天の斑駒を生きたまま逆剥ぎにして、御殿の屋根に穴を開けて 斑駒の皮を投げ入れた
 ・このとき、アマテラスは大変驚いて機織りの梭で身体を傷付けてしまった
  ・一説には、織女のワカヒヒメは驚いて機から落ち、持っていた梭で身体を傷付けて亡くなったとも云う
  ・なお、このワカヒヒメとはアマテラスの妹である
・この一件の後、アマテラススサノオに会いたくは無いと言い、天の岩屋に入って磐戸を閉じて隠れてしまった
 ・そのため、高天原はすっかり暗くなり、また葦原中国も暗闇となって昼夜の区別がつかなくなった
 ・よって、あらゆる邪神が騒ぐ声が夏の蠅のように世に満ちて、あらゆる禍が一斉に現れた
  ・これは、まるで常世国に居るようであった
 ・また、これによって諸神は憂い迷ったが、やがて燭を灯して生活するようになった
・その後、八百万の神々はアメノヤスカワの河原に集まって、アマテラスを岩屋から出す方策を話し合った
 ・そこで、智に優れていたタカミムスヒの子のオモイカネが深く思考を凝らして方策を提案した
・(オモイカネは、諸神に祭祀のための祭具などを準備するように命じた)
 ・まず、常世の長鳴鳥を集めて互いに長鳴きさせることにした
  ・すると、すぐに集めて鳴き合わせた
 ・また、アマテラスの形(偶像?)を造って、招き出す祈りを捧げることにした
 ・また、イシコリトメ(鏡作の祖)にアメノヤスカワの河上でアマノカタイシを採らせた
 ・また、真名鹿の皮を丸剥ぎにしてアマノハタタラを作り、アマノカナヤマの銅を採って日の矛を造らせた
  ・なお、このときに造った鏡は やや不出来であった
  ・これが紀伊国に鎮座するヒノクマノカミである
 ・また、アマノヌカト(鏡作の祖で、イシコリトメの子)に天香山の銅を取らせて日の形の鏡を造らせた
  ・出来あがった鏡は とても優美であったが、岩戸に触れた時に小さな傷が付き、その傷は今もある
  ・なお、この鏡が伊勢に祀られている大神であり、いわゆるヤタノカガミ(マフツノカガミ)である
 ・また、クシアカルタマ(玉作の祖で、イザナギの子)にヤサカニノイホツノミツマルのための玉を造らせた
 ・また、アマノフトタマに諸々の部の神を預けて、幣帛を作らせた
 ・また、ナガシラハ(麻積の祖)に麻を植えさせて、これを青和幣とした
  ・今、衣を白羽と言う由縁である
 ・また、ツクイミに殻木綿を植えさせて、これで白和幣を作らせた
  ・なお、麻と殻木綿のどちらも一晩で生い茂った
 ・また、アマノヒワシ(阿波の忌部の祖)に木綿を作らせた
 ・また、アマノハヅチオ(倭文造の祖)に文布(あやぬの)を織らせた
 ・また、アマノタナハタヒメ神衣を織らせた
  ・これは、いわゆる和衣であり、ニギタエともいう
 ・また、タオキホオイ(紀伊の忌部の遠祖)にを作らせた
  ・この後、これを職とした
 ・また、ヒコサシリを作らせた
 ・また、トヨタマノタマヤ(玉作部の遠祖)にを作らせた
 ・また、アマノマヒトツに、諸々の刀・斧・鉄鐸を作らせた
  ・なお、鉄鐸サナギという
 ・また、ノツチに沢山の野薦(のすず)と玉を付けた木を集めさせた
 ・また、テオキホオイヒコサシリの二神に、アマノミハカリで大小様々な器類を量らせ、名を付けさせた
  ・さらに、大小の谷の材木を伐らせ、瑞殿を造らせた
 ・また、山と雷の神に天香山の枝葉のよく繁った榊を掘って採らせた
 ・これらの準備を終えると、祭祀のために榊を飾らせた
  ・まず、榊の上段の枝にヤタノカガミ(マフツノカガミ)を掛けた
  ・次に、榊の中段の枝にヤサカニノイホツノミスマルの玉を掛けた
  ・次に、榊の下段の枝に青和幣白和幣を掛けた
 ・こうして、種々の準備は打ち合わせ通りに終えることができた
・(この後、アマテラスを岩屋から招き出すための祭祀の準備に取り掛かった)
 ・まず、アマノコヤネ(中臣の祖)とアマノフトダマ(忌部の祖)に、天香山の牝鹿の肩の骨と朱桜を取らせて占わせた
 ・また、タヂカラオを岩戸の脇に隠れさせた
 ・また、アマノフトダマアマテラスの徳を讃える旨の詞を唱えさせ、アマノコヤネと共に祈らせた
・(そして、遂にアマテラスを岩屋から招き出す方策を実行した)
 ・まず、フトダマアマテラスの徳を讃える詞を このように申し上げた
  ・「私が持つ宝鏡の麗しさは、あたかも貴方様のようです」
  ・「さあ、岩戸を開けてご覧ください」
 ・次に、アマノフトダマアマノコヤネは共に祈祷をした
 ・このとき、アマノウズメは このような姿になった
  ・まず、天香山のアマノマサカキを髪に纏った
  ・また、天香山のアマノヒカゲを襷として掛けた
  ・また、天香山の笹の葉を手草とした
  ・また、鐸を付けた矛を持った
 ・そして、アマノウズメは このように舞って周囲を盛り上げた
  ・まず、岩戸の前に立って、庭火を炊いた
  ・次に、桶を伏せて、それを踏み鳴らした
  ・次に、神懸かったように喋りはじめた
  ・次に、胸を曝け出し、裳の紐を陰部まで下げて踊った
 ・すると、高天原が轟くばかりに八百万の神々が一斉に沸いた
 ・この様子に、岩戸の中のアマテラスは不思議に思って、このように言った
  ・「私が岩屋に籠っているため、天下は暗闇に包まれ、葦原中国は長い夜が続いていることだろう」
  ・「しかし、なぜアマノウズメは歓喜し、また八百万の神々も沸いているのだろうか」
 ・アマテラスは怪しんで、岩戸を僅かに開いて外の者に理由を尋ねた
 ・すると、アマノウズメは このように答えた
  ・「それは、貴方様よりも素晴らしく尊い神が現れたから、皆が喜んでいるのです」
 ・そこで、アマノコヤネアマノフトダマが鏡をそっと差し出した
 ・アマテラスは さらに怪しく思って、細めに岩戸を開けて鏡を見ようとした
 ・そのとき、タヂカラオアマテラスの手を取って引き出し、その岩戸を開けて新殿に遷した
 ・すると、とっさにアマノコヤネアマノフトダマヒノミツナを新殿の後ろに境界として張り巡らし、注連縄とした
 ・また、オオミヤメ(アマノフトダマの子)をアマテラスの御前に侍らせた
  ・これは、今の宮中の女官内侍が言葉巧みに君と臣との間を和らげて、君の御心を喜ばせるようなものである
 ・また、トヨイワマドクシイワマドの二神に新殿の門を守護させた
  ・二神ともアマノフトダマの子である
アマテラスアマノイワヤから出てくると、高天原と葦原中国に日が差して明るさを取り戻した
 ・天が晴れると、皆でこのように歌った
  ・あはれ(天が晴れることの意である)
  ・あなおもしろ(それが最高であることを"あな"といい、神々の顔が明るく白くなったことを"おもしろ"という)
  ・あなたのし(手を伸ばして舞うことを指し、今の"楽しい"の由縁となっている)
  ・あなさやけ(笹の葉が"ささ"と鳴る音を指し、その音に由来する語である)
  ・おけ(恐らく木の名前であり、その葉を揺り動かす時の言葉である)
 ・そして、すぐにアマノフトダマアマノコヤネの二神がアマテラスに このように申し上げた
  ・「もう、アマノイワヤにはお戻りにならないでください」


スサノオの追放

・八百万の神々が集まって相談し、スサノオの罪を追求した
 ・そして、その罪を購わせるために千座の置戸に沢山の品物を献上させた
 ・さらに、スサノオの髭と爪を抜いた
  ・なお、手先と足先の爪を出させ、唾(つば)を白和幣とし、涎(よだれ)を青和幣としたもいう
 ・その後、アマノコヤネに罪を祓わせる祝詞を奏上させた
  ・今、世の人が自分の切った爪を他人に渡らないようにするのは、これに由来する
 ・諸神はスサノオを責めて このように言った
  ・「貴方は無頼な行いをしたため、天上に留まるべきではない」
  ・「また、葦原中国に居てもならない」
  ・「よって、速やかに根の国に行ってください」
 ・そして、皆でスサノオを追放した
スサノオは追放された後に、ミケツヒメ(オオゲツヒメ)に食物を乞うた
 ・すると、オオゲツヒメは鼻・口・尻から様々な美味い食物を取り出し、それを調理して差し出そうとした
 ・しかし、それを見ていたスサノオは汚らわしいと思い、その場でオオゲツヒメを斬り殺してしまった
 ・その後、オオゲツヒメの死体から様々な食物が生じた
  ・頭には、蚕が生じた
  ・目には、稲種が生じた
  ・耳には、粟が生じた
  ・鼻には、小豆が生じた
  ・陰部には、麦が生じた
  ・尻には、大豆が生じた
 ・そこで、カミムスヒが これらを取らせて種とした
スサノオは青草を編んだ笠蓑を纏い、神々に宿を乞うて巡った
 ・しかし、神々は このように言って断った
  ・「貴方は自分の行いが悪かったために責められているのです」
  ・「そのため、我々に宿を乞うことが許されましょうか」
 ・悉く宿を断られたスサノオは、休むことも無く苦労して降って行った
  ・これ以後、世の人は笠蓑を着たままで他人の家に入ろうとすることを忌むようになった
  ・また、束ねた草を背負って他人の家に入ろうとすることも忌むようになった
  ・もし、これを犯す者が居れば、必ず罪の償いを負わされる
  ・これは、大昔からの遺法である
スサノオアマテラスの元にやって来た
 ・そして、このように言った
  ・「私が再びやってきたのは、諸神が私の根国追放を決めたからです」
  ・「しかし、姉に会わずして別れることが出来ましょうか」
  ・「今度は、私は本当に清い心を持って参上しました」
  ・「もう、お目にかかるのも最後になるでしょう」
  ・「私は今から長く根国に参りますが、どうか姉の治める天上が平安でありますように」
  ・「また、私が清い心で生んだ子供を、姉の尊に奉ります」
 ・そして、帰って降って行った


後書

参考文献

先代旧事本紀(ウィキペディア)
天璽瑞宝(現代語訳「先代旧事本紀」)
『先代旧事本紀』の現代語訳(HISASHI)


関連項目

日本神話のススメ(記紀神話の解説とまとめ)
『古事記』による日本神話
『日本書紀』による日本神話
『古語拾遺』による日本神話
神武東征