人文研究見聞録:住吉大社 [大阪府]

大阪市住吉区にある住吉大社(すみよしたいしゃ)です。

第14代仲哀天皇の后である神功皇后によって創建されたと伝わる古社であり、主に海の神としての信仰を集めています。

また、全国に約2,300社ある住吉神社の総本社であり、日本三大住吉の一社にも数えられています。

なお、毎年の初詣の参拝者が非常に多い事でも有名です。


神社概要

由緒

人文研究見聞録:住吉大社 [大阪府]

由緒書によれば、住吉大神(底筒男命・中筒男命・表筒男命の総称)から「吾(あ)が和魂(にぎみたま)を宜しく大津渟中倉長峡(おおつのぬなくらのながお)に居くべし、便ち因りて往来ふ船を看む」との神託が下ったことから、神功皇后摂政11年辛卯の歳(AD.211)に神功皇后が当地で鎮祭を為したことに始まるとされています。

なお、文献にある住吉大社の由緒は以下の通りです。

『日本書紀』(三韓征伐の伝説)

仲哀8年(AD.199)に仲哀天皇は熊襲討伐のため、神功皇后らと共に儺県(現・博多)の香椎宮に訪れた。そこで神功皇后に住吉三神が神懸かり「熊襲よりも新羅を攻めよ」との神託を受けた。仲哀天皇は それに従わずに熊襲征伐を行うが、失敗して遂には香椎宮で崩御することになる。なお、皇后らはこれを「神の託宣を聞かなかったためだ」と嘆いたという。

仲哀天皇が急死すると、神功皇后が代わって政事を執ることになり、神功皇后はまず熊襲を討伐した。すると、再び住吉三神より新羅征討の神託を下ったことから、対馬の和珥津(わにつ)を出航した。その際、神功皇后は御子(のちの応神天皇)を妊娠したまま海を渡って朝鮮半島に出兵して新羅の国を攻めた。その際、神功皇后の船は大風・大波・大魚などの助けを得て海上から国の中程まで上陸したことから、その光景を畏れた新羅は戦わずに降服して朝貢を誓い、高句麗・百済も朝貢を約束したという。

その後、神功皇后摂政元年(AD.201)に神功皇后が大和に帰還すると、そこで香坂皇子・忍熊皇子の反乱に遭い、さらに難波へ向かうも船が進まなくなったため、務古水門(むこのみなと)で占った。すると、住吉三神が"吾の和魂を大津の渟中倉の長峡(おおつのぬなくらのながお)で祀れ"との神託を下したため、神宮皇后が言う通りに鎮祭すると、無事に海を渡れるようになったという。

この「大津の渟中倉の長峡」が住吉大社の地に比定されており、この伝説における住吉大社の由緒は"神功皇后が大津の渟中倉の長峡にて住吉三神の和魂を祀ったことに始まる"とされる。

『帝王編年記』

住吉の地における鎮祭年を神功皇后摂政11年(AD.211)としている(住吉大社も この年をもって鎮祭としている)

『住吉大社神代記』

住吉三神は「渟中椋(ぬなくら)の長岡の玉出峡(たまでのお)」に住むことを欲したので、神功皇后はその地に住んでいた手搓足尼(田裳見宿禰)を神主として祀らせた

なお、この田裳見宿禰の後裔が住吉大社の祭祀を担った津守連(津守氏)一族であるとされる。

祭神

人文研究見聞録:住吉大社 [大阪府]

住吉大社の祭神は以下の通りです。

主祭神

・底筒男命(ソコツツノオ):イザナギが黄泉国から戻ってきた後に行った禊で生まれた
・中筒男命(ナカツツノオ):同上
・表筒男命(ウワツツノオ):同上
・神功皇后(じんぐうこうごう):仲哀天皇の皇后であり、応神天皇の母

なお、上記の神は「住吉大神」と総称されて「海の神」として信仰されている

関連社

摂社

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大海神社
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若宮八幡宮
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志賀神社
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船玉神社

住吉大社の摂社は以下の通りです。

・大海神社(だいかいじんじゃ):豊玉彦命(トヨタマヒコ)、豊玉姫命(トヨタマヒメ)を祀る
 → 社前にある井戸「玉の井」は、神話で海神より授かった潮満珠 (しおみつたま) を沈めたと伝えられる
・若宮八幡宮(わかみやはちまんぐう):誉田別尊 (ほんだわけ)、武内宿禰(たけしうちのすくね)を祀る
 → 誉田別尊は仲哀天皇と神功皇后の子であり、第15代応神天皇でもある
・志賀神社(しがじんじゃ):底津少童命(ソコツワダツミ)、中津少童命(ナカツワダツミ)、表津少童命(ウワツワダツミ)を祀る
 → 本社は福岡市の志賀海神社(しがうみじんじゃ)とされる
・船玉神社(ふなたまじんじゃ):天鳥船命(アメノトリフネ)、猿田彦神(サルタヒコ)を祀る
 → 祭神は住吉神の荒魂とも云われるという

末社

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楯社
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鉾社
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侍者社
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后土社
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楠珺社
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市戎大国社
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種貸社
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児安社
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海士子社
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龍社
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八所社
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新宮社
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立聞社
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貴船社
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星宮
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五社
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薄墨社
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斯主社
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今主社
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招魂社

住吉大社の末社は以下の通りです。

・楯社(たてしゃ):武甕槌命(タケミカヅチ)を祀る
 → 別名を楯御前 (たてごぜん) とも言い、本社は鹿島神宮とされる
・鉾社(ほこしゃ):経津主命(フツヌシ)を祀る
 → 別名を鉾御前 (ほこごぜん) とも言い、本社は香取神宮とされる
・侍者社(おもとしゃ):田裳見宿祢(たもみのすくね)、市姫命(いちひめ)を祀る
 → 初代の神主と その姫神を祀る
・后土社(ごどしゃ):土御祖神(ツチノミオヤ)を祀る
 → 鬼門を守護する社であり、古くは当地に祀られていた神木に神饌の残りや祭器を破棄していたという
・楠珺社(なんくんしゃ):宇迦魂命(ウカノミタマ)を祀る
 → 稲荷社であり、樹齢千年を超える霊木の根元に建立されている
・市戎大国社(いちえびすだいこくしゃ):事代主命(コトシロヌシ)、大國主命(オオクニヌシ)を祀る
 → 大阪最古のエビス神の社として信仰を集めている
・種貸社(たねかししゃ):倉稲魂命(ウガノミタマ)を祀る
 → 神から授かった「お種銭」を資本に加えて商売すると増殖繁栄するという信仰を以って崇敬を集めている
・児安社(こやすしゃ):興台産霊神(コゴトムスビ)を祀る
 → かつては縁結びの神として信仰を集めており、現在は子供の守り神としても崇敬されている
・海士子社(あまごしゃ):鵜茅葺不合尊(ウガヤフキアエズ)を祀る
 → 海宮伝説により祀られている海神とされる(祭神は山幸彦の御子神)
・龍社(たつしゃ):水波野女神(ミヅハノメ)を祀る
 → 元は御井殿社 (みいどのしゃ) と呼ばれ、記紀の竜宮伝説にまつわるとされる
・八所社(はっしょしゃ):素盞鳴尊(スサノオ)を祀る
 → 京都の八坂神社に由来する祇園信仰の社とされる
・新宮社(しんぐうしゃ):伊邪那美命(イザナミ)、事解男命(コトサカノオ)、速玉男命(ハヤタマノオ)を祀る
 → 「熊野九十九王子」の一つの「津守王子」であるとされる
・立聞社(たちぎきしゃ):天児屋根命(アメノコヤネ)を祀る
 → 別名を長岡社、春日社とも言い、縁切りの神として崇敬を集めている
・貴船社(きぶねしゃ):高龗神(タカオカミ)を祀る
 → 水や雨を司る神を祀る社であり、本社は京都の貴船神社とされる
・星宮(ほしのみや):国常立命(クニノトコタチ)、竈神(カマドノガミ)を祀る
 → 金星の神を祀るとされ、竈神は炊事場を守護する神とされる(金星神は天津甕星ではないのか?)
・五社(ごしゃ):大領・板屋・狛・津・高木・大宅・神奴祖神を祀る
 → 住吉の神職七家祖神を祀る
・薄墨社(うすずみしゃ):国基霊神(くにもとのみたま)を祀る
 → 住吉大社の第39代・津守神主を祀る
・斯主社(このぬししゃ):国盛霊神(つもりくにもりのみたま)を祀る
 → 住吉大社の第43代・津守神主を祀る
・今主社(いまぬししゃ):国助霊神を祀る
 → 住吉大社の第48代・津守神主を祀る(元寇の際の戦勝を祈願したとされる)
・招魂社(しょうこんしゃ):諸霊神を祀る
 → 住吉大社に縁の深い人などを祖霊神として祀る

境外社

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大歳社
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淺澤神社
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港住吉神社
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宿院頓宮(波除住吉神社)

住吉大社の境外社は以下の通りです。

大歳社(おおとししゃ)大年神(オオトシノカミ)を祀る
 → 稲の収穫の守護神とされ、大阪商人の間では特に集金の守護神として信仰されてきた
 → 境内社の「おいとぼし社」には、石の重さで願望成就を占う「おもかる石」がある
淺澤神社(あさざわじんじゃ)市杵島姫命(イチキシマヒメ)を祀る
 → 弁天さんともいわれ、芸能・美容の神として信仰を集めている
・港住吉神社(みなとすみよしじんじゃ):住吉大神(すみよしのおおかみ)、神功皇后を祀る
 → 大阪港に出入りする船の安全を守るために天保山に祀られていた(現在は港区築港1丁目に移転)
・波除住吉神社:底筒男命、中筒男命、表筒男命、息長足姫命を祀る
 → かつては住吉大社の御旅所だった。現在は宿院頓宮となっており、境内に「波除住吉神社址」の石碑がある

境内・周辺の見どころ

路面電車

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住吉大社の前には路面電車(阪堺電車)が通っています。

阿倍野や天王寺方面に続いているため、ここから人気の観光スポットを経由することができるようです。

鳥居

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住吉大社の鳥居です。

狛犬

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住吉大社の狛犬です。

絵馬殿

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住吉大社の絵馬殿です。

参道の左右に建てられており、参詣者の休憩所になっています。

反橋(太鼓橋)

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住吉大社の反橋(そりはし)です。

住吉大社の象徴となっている橋であり、通称 太鼓橋(たいこばし)と呼ばれています。

なお、この橋を渡るのは参詣に際して、罪や穢れを祓い清めるためであるとされているそうです。

誕生石

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住吉大社にある誕生石(たんじょうせき)です。

源頼朝の寵愛を受けた丹後局 (たんごのつぼね) が、ここで出産した場所と伝えられています。

なお、その子が薩摩藩の島津氏の始祖・島津忠久(しまづただひさ)となったそうです(諸説ある)。

御田

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住吉大社の御田(おんだ)です。

この御田は神功皇后が水田を設けたことに始まるとされており、6月14日には御田植神事が行われるそうです。

五月殿

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住吉大社の五月殿(さつきでん)です。

7月31日に行われる夏越祓神事では、ここで大祓式が行なわれるそうです。

神馬像

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住吉大社の神馬像です。

住吉鳥居(角鳥居)

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住吉大社の住吉鳥居です。

鳥居の柱が四角いため、角鳥居 (かくとりい) とも呼ばれています。

これは本殿と拝殿の間に建つ朱塗りの鳥居が原形となっており、古い様式では大変珍しいものなんだそうです。

兎の手水舎

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住吉大社の兎の手水舎です。

兎は住吉大社の神使であり、この像は創建年月日の"辛卯年の卯月の卯日"に因んで奉納されたものとされています。

翡翠の撫で兎

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住吉大社の翡翠の撫で兎です。

神使の兎を模った翡翠の像であり、撫でて招福を祈願するものとされています。

第一本宮

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住吉大社の第一本宮です。

主祭神の一柱である底筒男命(そこつつのおのみこと)を祀っています。

第二本宮

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住吉大社の第二本宮です。

主祭神の一柱である中筒男命(なかつつのおのみこと)を祀っています。

第三本宮

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住吉大社の第三本宮です。

主祭神の一柱である表筒男命(うはつつのおのみこと)を祀っています。

第四本宮

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住吉大社の第四本宮です。

主祭神の一柱である神功皇后(じんぐうこうごう)を祀っています。

伊勢神宮遥拝所

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住吉大社の伊勢神宮遥拝所です。

伊勢神宮を遥拝するための場所とされ、変わった形の神鏡が祀られています。

侍者社

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住吉大社の侍者社(おもとしゃ)です。

良縁祈願の「土人形」や「絵馬」を奉納する社であり、縁結び・夫婦円満などの信仰を集めているとされます。

石舞台

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住吉大社にある石舞台です。

舞楽を奏でる舞台であり、慶長年間に豊臣秀頼によって奉納されたものとされています。

なお、当社の石舞台は厳島神社、四天王寺と並んで、日本三舞台の一つに数えられているそうです。

五所御前

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住吉大社にある五所御前(ごしょごぜん)です。

神功皇后が神を祀る土地を求めていた時、此処の杉の木に3羽の白サギが止まって導いたと伝えられる聖地とされています。

また、別名を高天原 (たかまがはら) とも言い、神霊を迎える御生所(みあれどころ)でもあるそうです。

なお、玉垣の中の「五・大・力」と書かれた小石を集めて御守りにすると、心願成就の御利益があるとされています。

楠珺社

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住吉大社の末社・楠珺社(なんくんしゃ)です。

江戸時代に人々は境内の楠の大樹に祈りを捧げており、後に根元の社に稲荷神を祀ったと云われているそうです。

招福猫

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住吉大社の招福猫(しょうふくねこ)です。

繁栄を祈願する土人形であり、毎月集めて48体揃うと満願成就の証として奉納するものとされています。

なお、奉納する際には より大きな招福猫と交換されるそうです。

種貸社

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住吉大社の末社・種貸社(たねかししゃ)です。

祈祷すると「お種銭」が授けられ、これを元手に加えて祈願をすると資金調達の御利益があるとされています。

また、子宝祈願の崇敬も厚く、子宝に恵まれると「種貸人形」を奉納する慣わしとなっているそうです。

一寸法師発祥の地

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種貸社にある一寸法師発祥の地です。

有名なお伽話である『一寸法師』は、老夫婦が住吉大明神に子宝祈願して子を授かることから始まります。

住吉大社は これに因んで一寸法師発祥の地とされており、種貸社には子宝の御利益があるとされています。

一寸法師の手水舎

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種貸社の手水舎は、一寸法師を模った像から水が出る珍しいものとなっています。

料金: 無料
住所: 大阪府大阪市住吉区住吉2丁目9-89(マップ
営業: 6:00~17:00
交通: 住吉大社駅(徒歩3分)

公式サイト: http://www.sumiyoshitaisha.net/index.html
matapon
著者: matapon Twitter
「日本神話」を研究しながら日本全国を旅しています。旅先で発見した文化や歴史にまつわる情報をブログ記事まとめて紹介していきたいと思っています。少しでも読者の方々の参考になれば幸いです。