人文研究見聞録:輿成神社(東大寺境内) [奈良県]

奈良県奈良市にある輿成神社(こうじょうじんじゃ)です。

東大寺境内に鎮座する二月堂の守護社の一つであり、祭神に豊玉媛命を祀っています。


由緒

東大寺二月堂で行われる「お水取り(修二会)」を守護する3社の一つで、由緒書によれば二月堂前の若狭井の「遠敷明神が若狭より送水した折、地面を割ると岩盤から黒・白の2羽の鵜が飛び出し、その穴から清水が湧き出した」という伝承に基いて鵜を祀ったのが輿成神社であるとされています。

平安期には「不死薬を人に与えて、長寿を保たせる」という旨の誓願を持つ菩薩として信仰されていたとされ、八大菩薩として現存しているのは当社だけなんだそうです。

なお、由緒書による解説は以下の通りです。

【輿成神社(こうじょうじんじゃ)】

修二会行法を守護する3社(輿成、飯道、遠敷)の一つで、遠敷明神が若狭より送水された折、黒・白の2羽の鵜が岩盤を撃ち破って飛び出て、そのあとから甘泉湧出したのが若狭井(わかさい)で、鵜を祀ったのが輿成神社である。

平安時代には「能く不死薬を取りて人に与え食せしめ、長生きの齢を保たしむ」という誓願を持つ菩薩として信仰されていた。平安期には既に現在地に鎮座していたと想像される。八大菩薩として現存しているのは当社だけである。

祭神

輿成神社の祭神は以下の通りです。

・豊玉媛命(トヨタマヒメ):ホオリ(山幸彦)の后であり、ウガヤフキアエズの母神に当たる
 → 『記紀神話』によれば、海中にある海神宮に住む神であり、その正体は鰐もしくは龍であったとされる

関連知識

由緒の参考資料として若狭井の伝承を載せておきます。

【若狭井の伝承】

若狭神宮寺に渡ってきたインド僧・実忠は、東大寺に二月堂を建立し、大仏開眼の2ヶ月前から祈りの行法(修二会)を行い、初日に「新名帳」を読み上げて日本国中の神々を勧進した。

しかし、若狭の遠敷明神だけが漁に夢中になって遅刻し、あと2日で終わるという日に現れた。遠敷明神は詫びとして、二月堂の本尊に供える「閼伽水(清浄聖水)」を献じることを約束して地面を割ると、岩盤から黒・白の2羽の鵜が飛び出して その穴から清水が湧き出した。これは若狭の「鵜の瀬」より地下を潜って水を導かせたのである。

この湧き水を「若狭井(わかさい)」と名付け、以後1250年の長期に渡って守り続けられている若狭井より「閼伽水」を汲み上げて本尊に供える儀式が「東大寺二月堂のお水取り」である。

若狭小浜の神宮寺では、3月2日に「お水送り」の神事が執り行われる。

参考資料:鵜の瀬(うのせ)

料金: 無料
住所: 奈良県奈良市雑司町406(マップ
営業: 不明(東大寺営業中は開放)
交通: 近鉄奈良駅(徒歩22分)
matapon
著者: matapon Twitter
「日本神話」を研究しながら日本全国を旅しています。旅先で発見した文化や歴史にまつわる情報をブログ記事まとめて紹介していきたいと思っています。少しでも読者の方々の参考になれば幸いです。