人文研究見聞録:六甲山 [兵庫県]

兵庫県神戸市の北部に位置する六甲山(六甲山地)の概要や魅力についてまとめました。



概要

六甲山とは?


人文研究見聞録:六甲山 [兵庫県]
六甲山

六甲山(ろっこうさん)は、兵庫県神戸市の北部にある六甲山地の主峰で標高は931mとされています。

関西地方の観光地として有名であり、山内には ゴルフ場や人工スキー場などのレジャー施設や、高山植物園、観光牧場、森林公園、企業の保養所などがあり、山上から望む神戸市街の夜景は絶景として知られています。

また、古くは「むこ」の名で呼ばれ、武庫・務古・牟古・六兒・無古などの字が当てられており、諸説あるものの「六甲」も「むこ」に当てられた字であると言われています(『日本書紀』には「務古水門(むこのみなと)」の記載がある)。


六甲山の磐座


人文研究見聞録:六甲山 [兵庫県]
六甲比命大善神

六甲山地には"巨大な岩石""奇妙な形の岩石"が点在しており、これらを"イワクラ(信仰対象の御神体)""ヒモロギ(巨石で築いた古代祭場)"として祀っている例が多数見られます。

これらの岩石に祀られる神々はムカツヒメククリヒメアメノホヒなどであり、その他にも様々な民話にまつわるものもあるため、ハイキングコースとして巡ってみると新しい発見があるかも知れません。

詳しくはこちらのページを参照:【磐座信仰とは?】【六甲山周辺の磐座マップ】


六甲山の楽しみ方


人文研究見聞録:六甲山 [兵庫県]
神戸市街の夜景

六甲山には以下のような楽しみ方があります(あくまで一例です)。

・観光地巡り:六甲山上には様々なレジャー施設があり、施設内で御当地グルメを楽しむことができます
・ハイキング:六甲山の自然や景勝地および、山上の神社仏閣や巨石・珍石を巡って楽しむことが出来ます
・オカルト体験:六甲山ではUFOの目撃例が多いとされ、その他にも不思議な体験ができると言われています


六甲山までのアクセス


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六甲ケーブル

六甲山までのアクセス方法をまとめました。


・六甲ケーブル:神戸市街と六甲山を結ぶケーブルカー(公式
・六甲山上バス:六甲山上の観光スポットを巡る路線バス(公式
・まやビューライン:摩耶山・掬星台と山麓を結ぶ交通ライン(公式
・神戸布引ロープウェイ:神戸市街と布引ハーブ園を結ぶロープウェイ(公式
・六甲有馬ロープウェー:六甲山上と有馬温泉を結ぶロープウェー(公式


六甲山の観光地


人文研究見聞録:六甲山 [兵庫県]
六甲山カンツリーハウス

六甲山の観光地をまとめました。

レジャー施設


・六甲ガーデンテラス:定番の観光地であり、展望施設・レストラン・商業施設が集まっている(公式
・凌雲台:六甲山西方に位置する展望スポットであり、付近には六甲ガーデンテラスがある
・天覧台:六甲山上駅付近にある展望スポットであり、1000万ドルの夜景が楽しめる(公式
・六甲高山植物園:世界の高山植物を約1500種類集めた植物園(公式
・六甲オルゴールミュージアム:オルゴールをテーマとした博物館(公式
・六甲山カンツリーハウス:六甲山でアウトドア体験ができるレジャー施設であり、園内に天穂日命の磐座がある(公式
・六甲山スノーパーク:六甲山上の人工スキー場であり、スキーやスノーボードを楽しめる(公式
・六甲山フィールド・アスレチック:六甲山上にある本格的なアスレチックコース(公式
・神戸ゴルフ倶楽部:六甲山上に造られた日本初のゴルフ場(公式
・兵庫県立六甲山自然保護センター:六甲山にまつわる情報を発信する自然科学博物館(公式
・神戸市立六甲山牧場:六甲山上にある高原牧場で、約120頭のヒツジが放し飼いにされている(公式
・掬星台:摩耶山の山頂付近にある展望広場で、日本三大夜景の一つに数えられる(公式
・神戸市立布引ハーブ園:神戸市立布引ロープウェイ付近にある日本最大級のハーブ園(公式
・ヴィーナスブリッジ:諏訪山上にある螺旋状の橋であり、神戸の夜景スポット・デートスポットとして有名(公式
・有馬温泉:日本三大古湯の一つに数えれる国内屈指の名泉であり、金色の銀色の湯があることで知られる(公式


自然


・布引の滝:布引渓流にある滝で、日本三大神滝に数えられる(公式
・諏訪山公園:諏訪山付近にある公園で、金星台やビーナスブリッジがある(公式
・再度公園:再度山にある公園で、景観の美しさから国の名勝にも指定されている(公式
・有馬四十八滝:有馬温泉の南方にある滝群の総称で、冬場には霧氷・樹氷が見られることで知られる
・芦屋ロックガーデン:六甲山内にある岩場で、日本のロッククライミング発祥の地とも云われる
・奥池:六甲山の標高約500mの高台に位置する池で、周辺は高級住宅地となっている
・蓬莱峡:六甲山の東に位置しており、荒々しい崖からなる峡谷として有名な景勝地とされる
・巨石(磐座):六甲山上には巨石や奇岩が多数点在している(六甲山周辺の磐座マップを参照)


神社仏閣


六甲比命神社六甲山の神とされる六甲姫(ムカツヒメとも)を祀る神社であり、巨大な岩石を御神体とする(公式
・忉利天上寺:法道仙人が開いたとされ、摩耶夫人(釈迦の生母)を本尊とした日本唯一の寺院として知られる(公式
・徳光院:明治期に創建された臨済宗天龍寺派の寺院(公式
諏訪神社神戸を代表する生田神社と長田神社の中間に位置するタケミナカタを祀る神社
・大龍寺:再度山にある真言宗寺院で、和気清麻呂によって創建されたと伝わる(公式
・鷲林寺:空海(弘法大師)が創建した真言宗の寺院であり、紅葉の名所として知られる(公式
・神呪寺:空海と真名井御前にまつわる寺院であり、本尊に如意輪観音菩薩を祀る(公式
六甲山神社ククリヒメを祀る白山信仰の神社であり、境内に石宝殿と呼ばれる奇妙な石祠がある
・越木岩神社:ヒルコを祀る神社であり、甑岩などの巨石が祀られていることで知られる(公式
・保久良神社:金鳥山の中腹ある神社で、磐座が祀られることで知られ、カタカムナ文献との関連性も指摘されている
芦屋神社六甲山に天降ったとされるアメノホヒを祀る神社であり、境内に古墳がある神社として知られる(公式


六甲山の名物料理


人文研究見聞録:六甲山 [兵庫県]
ジンギスカンバーガー

六甲山の名物料理をまとめました。

・ジンギスカン:羊肉を使った焼肉料理であり、六甲山ジンギスカンパレス(ガーデンテラス内)で食べられる
・ジンギスカンバーガー:ジンギスカンの具を白パンに挟んだ料理であり、六甲山カンツリーハウス内で食べられる
・登六庵のカレー:かつて六甲山にあった茶屋・登六庵のカレーで、今は水道筋商店街のロジックという店で食べられる


民話・伝説・風説

六甲山の民話


六甲山にまつわる民話をまとめました。

カエル岩


昔、六甲山には大蛙(おおがえる)が住んでいた。その大きさは跳べば地響きがし、鳴けば木の葉が震えるほどであったが、温厚な性格で、人を脅かしたりすることはなかった。

ある日、大蛇が大蛙を喰おうと六甲山の梅谷にやって来て、岩陰から大蛙に襲いかかった。そのとき、大蛙は覚悟を決めて身構えると、その瞬間に体が岩となって大蛇の牙を防いだ。これは六甲山の神が大人しく過ごしていた大蛙を哀れんで岩にしたのだという。しかし、大蛇は諦めきれずに岩になった大蛙の傍に棲むことにした。

その後、ある村人が薪を取りに山に入り、カエル岩の前で休憩している間に眠ってしまった。ふと、目を覚ますと、岩に巻き付いた大蛇がこちらを見ているのに気付いて一目散に逃げ出した。そして、村に戻って その出来事を話した。

後日、その噂を聞いた村の若者が棒切れを持って梅谷にやってきたが、いくら探しても大蛇の姿は見えなかった。そこで、カエル岩の近くまで戻ってみると、大蛇はカエル岩に巻き付いたまま岩になってしまっていた。これ以後、カエル岩は蛇巻岩(じゃまきいわ)とも呼ばれるようになったという。

参考サイト:あしやの民話


弁天岩と鱶切り岩


六甲山の山中には、弁天岩(べんてんいわ)鱶切り岩(ふかきりいわ)という巨石がある。この両岩は今でも舗装された山道の両側にあるのだが、昔 この辺りは綺麗な水が流れるところであった。

その昔、芦屋の里のほとんどが米農家であったが、水に恵まれず、水不足になることが多かったので、そんなとき 里人たちは水神を祀る弁天岩に参って雨乞いをすると よく雨が降ったという。

あるとき、水神にいくら雨乞いしても雨が降らず、その年の里の田はひび割れるほど渇れて、稲は黄色く変色した。これに困り果てた里人は、六甲山で修行を積んだ山伏の彦兵衛に雨乞いの祈祷を頼むことにした。

彦兵衛は雨を降らすために"鱶切り行事(ふかきりぎょうじ)"を行うことにし、里人たちに沖からフカ(サメ)を取ってきて水神に供えるように頼んだ。里人たちが用意したフカは平らな石の岩の上に置かれ、彦兵衛は7日間の断食の行を行って死に物狂いで雨乞いの祈祷をしたが、一滴の雨も降らなかった。

その後、彦兵衛は供物のフカの腹を切り裂き、流れ出たフカの血を集めて弁天岩に振り掛けた。すると、水神は血で穢されたことに怒り出し、その怒りは暗雲となって現れた。この暗雲は六甲山の山頂あたりから湧き出し、次いで周囲に稲妻が走った。そして、天地をひっくり返すほどの大雨が降り注いだという。

里人たちは"恵みの雨"と喜んだが、この雨は弁天岩に掛かったフカの血を洗い流すために降ったものであった。後日、水神を怒らせてしまったことに気付いた里人たちは申し訳ないことをしたと反省し、以前にも増して水神を敬い祀ったという。

なお、この水神は今でも芦屋神社の古墳の中の水神社でヒッソリと祀られている。

参考サイト:あしやの民話


荒地山の七右衛門嵒


荒地山(あらちやま)への登山道には七右衛門嵒(しちえもんぐら)と呼ばれる人一人が通れるほどの狭い岩穴があり、登山者は そこを潜って山頂を目指したという(阪神大震災で一度潰れたが、現在では復旧されつつあるとされる)。

なお、荒地山は六甲山の神である六甲権現(六甲山石宝殿の祭神)の住処であると云われ、山中で悪事を働くと荒地山に招かれて神罰を受けるものされてきた。

昔、麓の芦屋村に七右衛門という身寄りのない若者が住んでおり、働き者であったことから村人に愛されていたが、兄のように慕っていた友人に裏切られたことで荒んだ生活を送るようになり、村人からも疎まれるようになった。

その後、六甲山で旅人が追い剥ぎに会うことが多くなったとき、村人たちは村から姿を消した七右衛門の仕業であろうと思い、七右衛門の行方を考えたときに"悪事をしたなら荒地山に違いない"という結論に至った。

そこで、村人たちが荒地山に登ってみると、岩石で頭を砕かれて死んでいる七右衛門を見つけたという。

参考サイト:六甲山系の岩石にまつわる民話と伝承


老ヶ石と石工


名石を求めて全国を巡っていた石工が老ヶ石と出会ったとき、あまりの素晴らしさに石を切って持ち出そうとした。そのとき、村人たちが駆けつけて石工に"老ヶ石のまつわる祟り"を話して聞かせた。

村人たちによれば、老ヶ石には"酔った勢いで切ろうとした男が石の中に吸い込まれて消えた" "老ヶ石に刃物を当てた者達が悉く恐ろしい目に遭った"などの曰くが付いているという。

しかし、石工は迷信だろうと相手にせずに老ヶ石を切り始めた。村人たちは恐れ慄きながら石工の様子を見守っていると、突然石工の手が止まり、棒立ちになったまま打ち込んだノミの痕を見つめていたという。

その様子を不思議に思った村人たちが石工の元に近づくと、ノミを打ち込んだ穴から真っ赤な血が流れているのが見えたので、村人は"言い伝えを破ったことで大変なことが起こった"と騒いで村に逃げ帰った。

その後、石工は謎の高熱に悩まされた挙句、気が狂ってしまったという。

参考サイト:六甲山系の岩石にまつわる民話と伝承


六甲山の伝説


六甲山にまつわる伝説・伝承をまとめました。

神功皇后にまつわる伝説


・神呪寺:神功皇后が国家鎮護のため、山に如意宝珠・金甲冑・弓箭・宝剣・衣服等を埋めたことから甲山と名付けられた
・石宝殿:神功皇后が"神の石"や"黄金の鶏"を埋めたと伝えられる(また、神功皇后の御廟とする説もある)


磐座にまつわる伝承


・弁天岩:古くから水神を祀る磐座であり、芦屋の里人はここで雨乞いをしたという
・蛙岩:大蛇に喰い付かれた大蛙が石化したものという伝承がある
・老ヶ石:"石に触れると老化する"や"刃物で切ろうとすると発狂する"などと云われている
・修行岩:昔、古寺山の僧が岩の上で修行したと伝わる(古寺山には膨大な宝が埋まっているとも)
雲ヶ岩法道仙人が多聞天(毘沙門天)と出会った場所であり、多門寺の奥院とされる
仰臥岩同上
心経岩同上(元々の心経岩は流れてしまったため、大正時代に再建された)
六甲比命大善神同上、『ホツマツタヱ』に登場するセオリツヒメの墓所という説もある
天穂日命の磐座昔、六甲山に天降ったアメノホヒを祀るために建てられた古代祭祀場と云われる
・甑岩:古代信仰の霊岩とされ、かつては岩より煙が立ち昇り、海上を行く船からも見えたと伝わる
・夫婦岩:昔から祟りの伝承があり、道路建設の際に砕こうとすると作業者が相次いで事故に遭ったという
・高座岩:岩の上で雨乞いのための馬の生贄祭祀が行われたと云われる


神呪寺の創建伝承


平安時代、第53代淳和天皇の第四妃であった真名井御前が寺を建てる場所を探していたとき、都の西方の山に美しく光る雲がかかっているのを見て甲山まで辿り着いた。

山の野には多彩な花が咲き乱れ、地中から立ち昇った蒸気が五色に輝き、空には美しく大きな蛾(が)が山を守るかのように黒い息を吐きながら舞っていた。

この様子に見惚れていた真名井御前が頂上にて茫然としていると、紫雲が峰を覆い、その中から女神が現れて「ここは"魔尼(まに)の峰"と言う その昔に宝を埋めた所なので、仏を祀るにはとても良い場所です」と告げて姿を消した。

この告げを聞いた真名井御前は喜んで尼となり、神呪寺を開いたという。


多聞寺奥院の創建伝承


紫雲に乗ってインドから渡来した法道仙人(ほうどうせんにん)は、六甲山の雲ヶ岩にて同様に紫雲に乗った多聞天に出会い「この霊地に留まって仏法を広めよ」と告げられた。

そこで法道仙人が寺を立てるに相応しい場所を探していると、山中に素晴らしく薫り高い白檀の木が立っていたので「この地こそ寺を建てるに相応しい。ここに多聞天の像を祀って寺を建てよう」と言って多門寺を開いたという。


六甲山の風説


六甲山にまつわる風説・都市伝説をまとめました。

・ターボばあちゃん:六甲山の高速道路にて、時速140kmを超える速度で走る老婆が現れるという
・首なしライダー:首のないライダーが爆走している姿が、六甲山周辺で目撃されるという
・牛女:女の顔で牛の身体をした化物が車を追いかけてくるという(牛の顔の女の話もある)
・メリーさんの館:六甲山山中にて霧の中に白壁の洋館が現れるという(中に入ると外人に囲まれて気を失うとも)
・UFOが出現する:六甲山周辺はUFOの目撃多発地帯と言われる(ビーナスブリッジ、水晶山上空、鉢巻展望台ほか)

matapon
著者: matapon Twitter
「日本神話」を研究しながら日本全国を旅しています。旅先で発見した文化や歴史にまつわる情報をブログ記事まとめて紹介していきたいと思っています。少しでも読者の方々の参考になれば幸いです。