人文研究見聞録:仰臥岩 [兵庫県]

兵庫県神戸市の六甲山にある仰臥岩(ぎょうがいわ)です。

六甲山に点在する巨岩の一つとして知られ、平たい岩を積んだような形状となっています。


概要

人文研究見聞録:仰臥岩 [兵庫県]

仰臥岩には案内板がありませんが、俗に"熊野大権現の磐座"と呼ばれている磐座であるとされます。

調べてみると、仰臥岩は吉祥院多聞寺(神戸市北区)の奥の院とされており、多聞寺の縁起によれば「インドから渡来した法道仙人(ほうどうせんにん)が六甲山の雲ヶ岩(紫雲賀岩)で修行中に紫色の雲に乗った毘沙門天(ビシャモンテン)と出会ったことから、第36代孝徳天皇の御代(645年)に多聞寺を開き、六甲山の仰臥岩・雲ヶ岩(紫雲賀岩)・六甲比命大善神・心経岩を多聞寺の奥の院とした」という経緯であるとされているようです。

なお、仰臥岩の周辺には石祠と石碑があり、石碑には熊野権現・佛眼上人・華山法皇と刻まれています。

祭神

仰臥岩で祀られている神は以下の通りです。

・八大龍王(はちだいりゅうおう):天竜八部衆に所属する竜族の八王であり、仏法を守護するとされる
 → 当地においては雲ヶ岩八大龍王(くもがいわはちだいりゅうおう)という(俗称 ミーサン)
  ⇒ 弁財天の家来に当たるとされ、生卵を好む神であるとされる
・熊野権現(くまのごんげん):熊野三山(熊野本宮大社・熊野速玉大社・熊野那智大社)の神々を指す
・仏眼上人(ぶつげんじょうにん):平安中期に叡福寺に住した僧であり、先んじて西国三十三所霊場を巡礼したとされる
・花山法皇(かざんほうおう):第65代天皇であり、出家して法皇になった

法道仙人とは?

人文研究見聞録:仰臥岩 [兵庫県]

法道仙人(ほうどうせんにん)とは、インドから日本に渡来してきたとされる仙人であり、鉄の宝鉢を持っていたことから空鉢仙人(くはつ、からはちせんにん)とも呼ばれています。

伝承によれば、インドの霊鷲山に籠って仙術を修行し、不思議な術を使って空中に浮かせた空の鉢に布施を受けていたため、皆から仙人と呼ばれたとそうです。そして、6~7世紀頃に中国・朝鮮半島を経由して日本へと渡ってきたとされ、播磨国を中心に数々の寺を開いたとされています(兵庫を中心に富山、鳥取、愛媛、大分にゆかりの寺が存在する)。

なお、法道仙人は六甲山の雲ヶ岩でも修行したとされ、この際に紫雲に乗って現れた毘沙門天(ビシャモンテン)を感得し、雲ヶ岩・六甲比命大善神・心経岩を奥ノ院とする吉祥院多聞寺を創建したと云われています。

また、wikipediaによれば、日本に渡来する際に牛頭天王(ゴズテンノウ)と共に渡ったとされ、その牛頭天王は姫路市の広峯神社に祀られた後、京都の八坂神社に祀られたといわれているそうです。

アクセス

人文研究見聞録:仰臥岩 [兵庫県]

Googleマップで確認できる六甲山の磐座群までのルートは2パターンあり、それぞれの特徴は以下の通りです。

【ルートA】

人文研究見聞録:仰臥岩 [兵庫県]
ルートAの案内板

・六甲山カンツリーハウスの中央入口駐車場の脇道より、道なりに進んでいく
 → しばらくは舗装された道が続き、カンツリーハウスの駐車場が見えてくる(Googleストリートビューで確認可能)
・舗装された道の先を進むと、やがて磐座群の案内板が現れて舗装されていない山道になる
 → ルート上にいくつかの山荘があるため、初見だと道に迷いやすい
・このルートで行けば、心経岩 → 六甲比命大善神(六甲比命神社) → 雲ヶ岩 → 仰臥岩 という順で磐座を拝める
 → 山道の途中で"ロープを伝って進む場所"や"梯子を登る必要のある場所"が出てくるため、軍手などがあると重宝する

【ルートB】

人文研究見聞録:仰臥岩 [兵庫県]
ルートBの案内板

・六甲山カンツリーハウスの中央入口駐車場の脇道のさらに西にある小道を道なりに進んでいく
 → 「関西大学六甲山荘」の表示の向かいにある小道(Googleストリートビューでは確認不可)
・ルート上に磐座群の案内板が現れるため、方向指示に従って進めば迷わないと思われる
 → 磐座群までの道は山道になっており、足場が悪く、手すりもないため注意が必要
・このルートで行けば、仰臥岩 → 雲ヶ岩 → 六甲比命大善神(六甲比命神社) → 心経岩 という順で磐座を拝める
 → 山道の途中で"ロープを伝って進む場所"や"梯子を登る必要のある場所"が出てくるため、軍手などがあると重宝する

※個人的には「ルートA(行き) → ルートB(帰り)」の順で参拝するのがベターだと思います。

周辺の様子

人文研究見聞録:仰臥岩 [兵庫県]

仰臥岩の周辺には方向指示板が無いため、見落としてしまう可能性があります。

ルート上を注意深く観察していれば、写真のような風景が見つかると思いますので、これを目印にしてください。

場所としては、六甲山カンツリーハウス南の山頂であるとされます。

なお、仰臥岩は平たい岩を積んだような形状の磐座となっています。

そして、その奥には石祠石碑が置かれており、この周りには榊と供物が供えられています。

人文研究見聞録:仰臥岩 [兵庫県]
石祠
人文研究見聞録:仰臥岩 [兵庫県]
石碑

ちなみに、仰臥岩の周辺にも数々の奇岩が点在していますので、それらに注目してみると面白いと思います。

料金: 無料
住所: 兵庫県神戸市灘区六甲山町北六甲(マップ
営業: 終日開放
交通: 六甲山上駅(徒歩46分)、六甲山上バス「六甲山スノーパーク下車」(徒歩7分)
matapon
著者: matapon Twitter
「日本神話」を研究しながら日本全国を旅しています。旅先で発見した文化や歴史にまつわる情報をブログ記事まとめて紹介していきたいと思っています。少しでも読者の方々の参考になれば幸いです。