人文研究見聞録:貴船神社・結社 [京都府]

京都市左京区にある貴船神社(きふねじんじゃ)結社(ゆいのやしろ)です。

本宮と奥宮の間に位置する「中宮(なかみや)」であり、祭神に磐長姫命(イワナガヒメ)を祀っています。

※当ページでは「貴船神社・結社」について紹介しています。


神社概要

由緒

由緒書によれば、初代神武天皇の曽祖父に当たる瓊々杵命(ニニギ)が大山祇命(オオヤマツミ)に娘の木花開耶姫命(コノハナサクヤヒメ)を妻に乞うた際、大山祇命(オオヤマツミ)は姉の磐長姫命(イワナガヒメ)も共に奉ったものの、瓊々杵命(ニニギ)は妹の木花開耶姫命(コノハナサクヤヒメ)だけを望んだため、磐長姫命(イワナガヒメ)は大変恥じて「吾は此処に留まって人々に良縁を授けよう」と言って鎮座したと伝えられているそうです。

そのため、古くから「縁結びの神」「恋を祈る神」としての信仰が篤く、平安時代には女流歌人である和泉式部(いずみしきぶ)が切ない恋情を歌に託して祈願したという逸話が有名であるとされています。

祭神

結社の祭神は以下の通りです。

主祭神

・磐長姫命(イワナガヒメ):コノハナサクヤヒメの姉に当たる神
 → 結社では、縁結びの神として男女の縁のみならず、人や会社との縁を結びつける神徳があるとされる

二ツ社(境内末社)

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結社の境内社は1社に私市社・林田社を併せ祀っており、併せて「二ツ社」と称されています。

なお、二ツ社の祭神は以下の通りです。

・私市社(きさいちしゃ):大國主命(オオクニヌシ)を祀る
 → 貴船明神の荒御魂を祀っているとされる
・林田社(はやしだしゃ):少名彦命(スクナヒコナ)を祀る
 → 医薬・酒造の神として祀られる

磐長姫命(イワナガヒメ)とは?

人文研究見聞録:貴船神社・結社 [京都府]
鬼灯の冷徹よりイワ姫(イワナガヒメをモデルとしている)

イワナガヒメとは「日本神話」に登場する神であり、オオヤマツミの娘で、コノハナサクヤヒメの姉とされています。

『記紀』では天孫・ニニギの神話の中に登場し、ニニギがコノハナサクヤヒメと出会った際、妻に娶ろうとオオヤマツミに乞うたところ、オオヤマツミは大変喜んで貢物の他、姉のイワナガヒメを共に差し出したとされます。

しかし、ニニギはイワナガヒメが醜いという理由でオオヤマツミに返してしまうという悲しい話になっています。なお、これ以降の説話は文献によって異なりますが、概ねニニギが恨まれて短命となる呪詛を掛けられるといったものになっています(結社の由緒とは結果が異なる)。

なお、諸文献にみるイワナガヒメの説話は以下のリンクから見ることができます。

『古事記』
『日本書紀』
『旧事紀』
『ホツマツタヱ』

境内の見どころ

鳥居

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結社の鳥居です。

本殿

人文研究見聞録:貴船神社・結社 [京都府]

結社の本殿です。

御神木

人文研究見聞録:貴船神社・結社 [京都府]

結社の御神木です。

樹高30メートル、樹齢400年の桂の木であり、根元から幾つもの枝が天に向かって聳え立っています。

これは、大地から龍の如く神気が立ち昇っていることを現しているとされています。

なお、貴船は古くは「気生嶺」「気生根」とも表記され、大地の気が生じる嶺・根源を意味しているそうです。

天乃磐船

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結社の天乃磐船(あまのいわふね)です。

貴船の山奥から出土した船形の自然石であり、平成8年に奉納されたものとされています。

なお、石の重さは約6トンあるそうです。

和泉式部歌碑

人文研究見聞録:貴船神社・結社 [京都府]

結社の和泉式部歌碑です。

平安時代の女流歌人・和泉式部は、夫との仲が悪くなった時に当社に詣でて以下の歌を詠んで祈願したとされます。

・『ものおもへば 沢の蛍もわが身より あくがれいつる 魂かとそみる』
 → 意訳:恋しさに悩んでいたら、沢に飛ぶ蛍も私の体から抜け出した魂ではないかと見える
・『おく山に たぎりて落つる 滝つ瀬の 玉ちるばかり ものな思ひそ』
 → 意訳:奥山にたぎり落ちる滝の水玉が飛び散るように、(魂が飛び散ってしまうほど)思い悩んではいけない

関連項目

貴船神社・参道
貴船神社・本宮
貴船神社・奥宮
貴船神社にまつわる伝説

料金: 無料
住所: 京都府京都市左京区鞍馬貴船町(マップ
営業: 6:00~18:00(夏季は20:00)
交通: 貴船口駅(徒歩45分)

公式サイト:http://kifunejinja.jp/index.html
matapon
著者: matapon Twitter
「日本神話」を研究しながら日本全国を旅しています。旅先で発見した文化や歴史にまつわる情報をブログ記事まとめて紹介していきたいと思っています。少しでも読者の方々の参考になれば幸いです。