人文研究見聞録:日向大神宮 [京都府]

京都市山科区にある日向大神宮(ひむかいだいじんぐう)です。

古墳時代の創建と伝わっている古社であり、応仁の乱で荒廃した後に伊勢の農民の手によって再興されたと云われています。そのためか、内宮と外宮があるなど、伊勢神宮を彷彿とさせるような様子が境内の所々に見られます。

よって、古くから「京の伊勢」と称されており、今でも開運や厄除の神社として崇敬を集めているとされています。


神社概要

由緒

社伝によれば、第23代顕宗天皇の御代(5世紀後半と推定)に筑紫日向(現・宮崎県)の高千穂の峯にある神蹟を遷して創建に至ったと伝えられているとされます(京都市の案内板では、清和天皇の勅願によって天照大神が勧請され、創建に至ったと説明されている)。

また、第38代天智天皇は圭田を寄進して鎮座する山を日御山(ひのみやま)と名付け、第56代清和天皇は勅願によって天照大神を粟田山に勧請し、第60代醍醐天皇は延喜の制において当社を宮幣社に列したそうです。

しかし、後の応仁の乱の兵火によって社殿および古記録の類が焼失し、祭祀も一旦途絶えたとされます。

その後、江戸初期の寛永年間に伊勢の松坂村の農民である松井藤左衛門によって仮宮が造営され、加えて宮中よりの修理料を賜って社殿の再興に至ったそうです。

また、慶長年間には徳川家康によって神領の加増と社殿の改築が為され、その他にも後水尾天皇・中御門天皇・後桃園天皇をはじめとする天皇や皇族の寄進を受けて来たとされています。

各社の祭神

日向大神宮の各社の祭神は以下の通りです。

内宮(上ノ本宮)

人文研究見聞録:日向大神宮 [京都府]

日向大神宮の内宮(上ノ本宮)の祭神は以下の通りです。

・天照大御神(アマテラス):皇祖神であり、太陽を神格化した神とされる(伊勢内宮の主祭神として有名)
・多紀理毘売命(タギリヒメ):宗像三女神の一(宗像大社・厳島神社の祭神として有名)
・市寸島比売命(イチキシマヒメ):宗像三女神の一で、弁財天とも習合する(宗像大社・厳島神社の祭神として有名)
・多岐都比売命(タギツヒメ):宗像三女神の一(宗像大社・厳島神社の祭神として有名)

外宮(下ノ本宮)

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日向大神宮の外宮(下ノ本宮)の祭神は以下の通りです。

・天津彦火瓊々杵尊(アマツヒコホニニギ):アマテラスの孫に当たり、皇族の祖神とされる
・天之御中主神(アメノミナカヌシ):『古事記』で天地開闢の後に最初に現れた神とされる

上ノ別宮

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日向大神宮の上ノ別宮の祭神は以下の通りです(内宮の横に鎮座しているため、直接は拝めない)。

荒祭宮

・月読尊(ツキヨミ):アマテラスの次に生まれた神で、月を神格化した神とされる
・高皇産霊神(タカミムスビ):『古事記』でアメノミナカヌシの次に生まれた神とされ、アマテラスと共に政を執った
・栲幡千千姫(タクハタチヂヒメ):アマテラスの御子のアメノオシホミミの妻であり、ニニギの母に当たる

下ノ別宮

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日向大神宮の下ノ別宮の祭神は以下の通りです。

高宮(こうのみや)

・天忍穂耳尊(アメノオシホミミ):アマテラスの御子であり、ニニギの父に当たる

多賀神社

・伊弉諾尊(イザナギ):国産み・神産みの神で、アマテラスの父に当たる
・伊弉冉尊(イザナミ):国産み・神産みの神で、『日本書紀』ではアマテラスの母に当たる

春日神社

・天児屋命(アメノコヤネ):主に祭祀を司る神で、中臣氏(藤原氏)の祖神とされる(春日大社の祭神として有名)
・武甕槌命(タケミカヅチ):武勇に優れた神で、フツヌシと共に出雲の国譲りを為した(鹿島神宮の主祭神として有名)
・経津主命(フツヌシ):武勇に優れた神で、タケミカツチと共に出雲の国譲りを為した(香取神宮の主祭神として有名)
・天太玉命(アメノフトダマ):祭祀を司る神で、忌部氏(斎部氏)の祖神とされる(大麻比古神社などで祀られる)

五行神社

・木火土金水の神とされる(五行説の神?)

別宮

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日向大神宮の別宮の祭神は以下の通りです。

福土神社(ふくどじんじゃ)

・大国主命(オオクニヌシ):出雲の神であり、葦原中国を造り上げたとされる(出雲大社の主祭神として有名)
・彦火火出見尊 (ヒコホホデミ):ニニギの御子の一人であり、ウガヤフキアエズの父に当たる(海幸山幸神話の山幸彦)
・ウガヤフキアエズ:ヒコホホデミの御子であり、初代天皇の神武天皇の父に当たる
・神日本磐余彦尊(カンヤマトイワレヒコ):初代天皇の神武天皇に当たる

山城国最初第一

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日向大神宮の山城国最初第一の祭神は以下の通りです。

恵美須神社

・事代主神(コトシロヌシ):大国主の子であり、大黒様に対する恵比寿様としても知られる

天鈿女神社

・天鈿女命(アメノウズメ):天岩戸神話で活躍した芸能の祖神とされる(サルタヒコの妻とも)
・大山祇神(オオヤマツミ):山を統べる神とされる

天岩戸

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日向大神宮の天岩戸の祭神は以下の通りです。

戸隠神社(とがくしじんじゃ)

・天手力男命(アメノタヂカラオ):天岩戸神話でアマテラスを岩戸から引っ張り出したとされる神

朝日泉

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日向大神宮の朝日泉の祭神は以下の通りです。

御井神社(みいじんじゃ)

・水波能売神(ミズハノメ):水を司るとされる神

その他の境内社

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猿田彦・花祭神社
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神田稲荷神社
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朝日天満宮
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厳島神社
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石碑

日向大神宮の その他の境内社の祭神は以下の通りです。

・猿田彦神社:猿田彦命(サルタヒコ)
・花祭神社(かさいじんじゃ):木花開耶姫( コノハナサクヤヒメ)
・神田稲荷神社:倉稲魂神(ウガノミタマ)、保食神(ウケモチ)
・朝日天満宮:菅原道真公(すがわらのみちざね)・少彦名命(スクナヒコナ)
・厳嶋神社:弁財天(べんざいてん)
・石碑:天龍龍神、地龍龍神

境内の見どころ

境内の雰囲気

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日向大神宮は鬱蒼と山中に鎮座しており、あまり人手が加えられてない印象を受けました。

そのため、大半の社殿は古く、手水社の水なんかも結構 濁っています(良し悪しは参拝者の判断によるでしょう)。

また、境内は割と広く、伊勢神宮遥拝所まで行くのであれば結構な時間と体力が必要だと思います。

なお、境内図については、公式サイトに載せられているので、そちらを参照すると分かりやすいです。

・参考リンク:日向大神宮 公式サイト

鳥居

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日向大神宮の鳥居です。

拝殿

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日向大神宮の拝殿です。

神馬舎

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日向大神宮の神馬舎です。

天岩戸

人文研究見聞録:日向大神宮 [京都府]

日向大神宮の天岩戸です。

日本神話」の天岩戸を彷彿とされる様な岩窟となっており、内部に戸隠神社が設けられています。

ちなみに天岩戸と称する場所は全国にいくつか存在しており、京都府内では少なくとも3箇所以上存在しています。

祭石 影向岩

人文研究見聞録:日向大神宮 [京都府]

日向大神宮の影向岩(ようごういわ)です。

天岩戸付近に位置しており、神の降りる憑代とされています。

伊勢神宮遥拝所

人文研究見聞録:日向大神宮 [京都府]

日向大神宮の伊勢神宮遥拝所です。

入口から神田稲荷神社の横を真直ぐ進むと石段の積まれた登山口があり、そこから向かうことが出来ます。

かなり長く険しい道のりをひたすら登って行くと、やがて見えてくる鳥居が これに当たります。

此処から伊勢神宮を遥拝することが出来るようになっているのですが、辿り着くまでは結構キツかったです。

しかし、登りきると清々しい気分を味わうことが出来ます。

料金: 無料
住所: 京都市山科区日ノ岡一切経谷町29(マップ
営業: 終日開放
交通: 蹴上駅(徒歩11分)

公式サイト:http://www12.plala.or.jp/himukai/index.html
matapon
著者: matapon Twitter
「日本神話」を研究しながら日本全国を旅しています。旅先で発見した文化や歴史にまつわる情報をブログ記事まとめて紹介していきたいと思っています。少しでも読者の方々の参考になれば幸いです。