人文研究見聞録:大宮氷川神社 [埼玉県]

埼玉県さいたま市大宮区にある氷川神社(ひかわじんじゃ)です。

スサノオの信仰の一つである氷川信仰の本拠であり、全国の氷川神社の総本社とされています。

また、武蔵国一宮であり、宮中の四方拝で遥拝される一社にも数えられているそうです。

加えて、最近では縁結びに御利益のあるパワースポットとして信仰を集めているとされています。

※東京都多摩市にある小野神社も武蔵国一宮を称するとされる


神社概要

由緒

社伝によれば、第5代孝昭天皇3年4月中の未の日の創建と伝えられています。また、社名の「氷川」は出雲の「斐伊川」に由来するとされ、出雲の斐伊神社の社伝によれば、孝昭天皇3年に斐伊神社の分霊を氷川神社に奉祀したとされています。

なお、氷川神社は創建以来より朝廷や武家の崇敬を集めたとされ、古くは第12代景行天皇の皇子・日本武尊(ヤマトタケル)が東征の折に当社にて東夷鎮圧の祈願をしたとされています。また、成務天皇の御代には、武蔵国造となった兄多毛比命(えたもひのみこと)が出雲族を引き連れて当地に移住し、当社を奉崇したとも伝えられているそうです。

その後、聖武天皇の御代(724~749年)には「武蔵国一宮」に定められ、次いで称徳天皇の御代である天平神護2年(766年)には朝廷から封戸(三戸)が寄進され、さらに醍醐天皇の御代である延長5年(927年)には『延喜式』神名帳に名神大社として破格の月次新嘗の社格が与えられたとされています。

また、武家政権となった鎌倉時代以降は、源頼朝をはじめ足利氏、北条氏などの崇敬を集め、江戸時代には徳川氏によって社領の寄進や社頭、社殿の造営が行われたそうです。

そして、明治時代には武蔵国総鎮守の「勅祭の社」に定められ、明治天皇も自ら参拝したとされます。加えて、明治4年に官幣大社となり、明治から昭和にかけて本殿・拝殿・回廊などを改築して現在に至るとされています。

祭神

氷川神社の祭神は以下の通りです。

・須佐之男命(スサノオ):出雲の祖神
・稲田姫命(イナダヒメ):スサノオの后
・大己貴命(オオナムチ):大国主の別名(氷川神社ではスサノオとイナダヒメの子とされる)

※大宮氷川神社の祭神については古くから諸説あるようですが、現在は上記の3柱で落ち着いているようです。

氷川神社の異説

氷川神社は江戸中期まで存在した見沼と呼ばれる広大な沼の畔に面して建っており、もとは「氷川神(ひかわのかみ)」と呼ばれる見沼の水神を祀っていたという説があるそうです。

また、大宮の氷川神社・中川の中氷川神社(現・中山神社)・三室の氷川女体神社が地図上で一直線に並ぶことから、この三社が本社(男体社)・中社(簸王子社)・奥社(女体社)として一体の氷川神社を形成していたという説もあるとされています。

氷川信仰とは?

スサノオに対する信仰には諸派が存在し、その一つに「氷川神社」を本拠とする「氷川信仰」があります。

そのほかには、出雲地方を本拠とするものをはじめ、「八坂神社」を本拠とする「祇園信仰」、「津島神社」を本拠とする「津島信仰」がありますが、スサノオ・牛頭天王を祀る「祇園信仰」「津島信仰」に対し、「氷川信仰」は氷川神・スサノオを信仰するというものになっているそうです。

また、信仰圏も関東を中心としており、氷川の付く神社は全国に261社あり、その内の6割が氷川神社のある埼玉に、2割強が関東にあるとされています(参考サイト)。

門客人神社について

人文研究見聞録:大宮氷川神社 [埼玉県]
門客人神社

氷川神社の摂社「門客人神社 (もんきゃくじんじんじゃ)」は、かつては「荒脛巾神社(あらはばきじんじゃ)」であり、祭神に氷川神社の地主神であるアラハバキを祀っていたとされています。

なお、アラハバキとは東北を中心に分布する民間信仰の神で、基本的には謎の神とされますが、主な説では日本の先住民族の神とされ、『東日流外三郡誌』という文献では神武東征で敗れた長髄彦によって祀られた神であるとされています。また、神名にある「ハバ(ハハ)」は蛇を指すことから、蛇神であるという説もあります。

現在の「門客人神社」では、出雲でスサノオが救ったとされる手摩乳命(テナヅチ)、足摩乳命(アシナヅチ)が祀られていますが、これは成務天皇の時代に武蔵国造が祀ったものと考えられているようです。ただし、テナヅチ・アシナヅチ自体も、アラハバキの一説にあるように蛇神であるとする説があります。

境内社

氷川神社の境内社は以下の通りです。

摂社

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門客人神社
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天津神社
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宗像神社

・門客人神社:足摩乳命、手摩乳命を祀る
・天津神社:少彦名命を祀る
・宗像神社:宗像三女神(多起理比売命、市寸島比売命、田寸津比売命)を祀る

末社(六社)

人文研究見聞録:大宮氷川神社 [埼玉県]
六社

・山祇神社:大山祇命を祀る
・石上神社:布都御魂命を祀る
・愛宕神社:迦具土命を祀る
・雷神社:大雷命を祀る
・住吉神社:住吉三神(底筒男命、中筒男命、上筒男命)を祀る
・神明神社:天照大御神を祀る

末社

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天満神社
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松尾神社
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御嶽神社
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稲荷神社

・天満神社:菅原道真公を祀る
・松尾神社:大山咋命を祀る
・御嶽神社:大己貴命、少彦名命を祀る
・稲荷神社:倉稲魂命を祀る(付近に猿田彦神の石碑もある)

境内の見どころ

参道

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氷川神社の参道です。

やたら烏(カラス)が飛んでいます。

鳥居

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氷川神社の鳥居です。

参道から3つの鳥居(一の鳥居から三の鳥居まで)が立ち並んでいます。

神楽殿

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氷川神社の神楽殿です。

楼門

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氷川神社の楼門です。

舞殿

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氷川神社の舞殿です。

拝殿

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氷川神社の拝殿です。

本殿

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氷川神社の本殿です。

料金: 無料
住所: 埼玉県さいたま市大宮区高鼻町一丁目407番地
営業: 5:30~17:30(夏季 5:00~18:00、冬季 6:00~17:00)
交通: 北大宮駅(徒歩10分)、大宮駅(徒歩19分)

公式サイト: http://musashiichinomiya-hikawa.or.jp/
matapon
著者: matapon Twitter
「日本神話」を研究しながら日本全国を旅しています。旅先で発見した文化や歴史にまつわる情報をブログ記事まとめて紹介していきたいと思っています。少しでも読者の方々の参考になれば幸いです。