人文研究見聞録:蟠竜湖 [島根県]

島根県益田市にある蟠竜湖(ばんりゅうこ)です。

上空から見ると「龍が手足を伸ばしたような形」になっていることからこの名で呼ばれています。

形成には諸説あり、平安時代(1026年)に石見国で発生したとされる万寿地震と大津波によって一夜にして出来あがったという話や、大人(おおひと)という巨人が踏み抜いた跡という話などがあり、そのほかにも多様な伝説が語られています。

なお、一般的には湖に生息する鯉にエサをやったり、ボートに乗って遊んだり、ブラックバスを釣ったりと市民の憩いの場として親しまれているようです。


蟠竜湖の伝説

人文研究見聞録:蟠竜湖 [島根県]

蟠竜湖には以下の様な伝説があります。

蟠竜湖の大蛇

昔、蟠竜湖には「まぶの口」という田んぼへ水を引き込む水の口があり、その山手側にちょうど亀甲のような盛り上った所があった。そこに通りかかった行者が、咲いていた綺麗な躑躅(つつじ)を取ろうとしたら、足元がぐらっと動いたという。

ビックリして退くと、それは昼寝をしていた大蛇の上だった。それを見て行者は命辛々逃げ帰ったという。

蟠竜湖に浮かんだ箸

昔、この地の殿様だった益田公が、今の泉光寺の場所に館を構えられた。そこには一度も涸れたことの無いという深い井戸があり、きれいな水が湧き出ていて飲み水や洗い水として使っていた。

ある時、住人が井戸へ誤って箸を落とした。すると明くる日、その箸が蟠竜湖に浮かんでいたという。

蟠竜湖に棲む九頭竜

泉光寺から少し離れたところに妙義寺があり、その近くには丸池と呼ばれる池があって、この池の山寄りに「九頭竜さん」と呼ばれている社があった。

その丸池には、九つの頭を持つ「九頭竜(くずりゅう)」が棲んでいて、ときどき蟠竜湖に浮いていたという。

大人の足跡(おおひとのあしあと)

松原町の山の中に足の形をした田があり、その大きさは七畝(693㎡)もある。

昔の人曰く、大昔、大人(おおひと)がここに片足を踏み込んで、もう片方は高津の蟠竜湖のところへ行ったという。

その次の足跡は、山口県の長門のどこかにあるということだそうな。

夕日を招く長者

昔々、高津の長者原に長者が住んでいたそうな。

ある年の田植えの頃、広い田んぼに早乙女たちがやってきて賑やかに田植えが始まった。昼になると、どこからか猿回しがやってきて、田植えをしていた人たちの前で、身ぶりおかしく猿の芸を続けたそうな。

それが、あんまり面白いので早乙女たちは田植えを忘れて、気がつくと日が沈みかけていた。それを見た長者は慌てて日の丸の扇を取り出して、「お日さまよ、天の真ん中にかえってこい」と、仰ぎ返した。すると、お日さまがもう一度高いところまで昇って田植えができたという。

ところが、その晩に大津波がきて、せっかく植えた田んぼや長者の家がぐるんと流れてしまった。その跡に竜の形をした湖ができ、それを蟠竜湖と呼ぶようになったという。

蟠竜湖の雰囲気

人文研究見聞録:蟠竜湖 [島根県]

蟠竜湖の入口にはボート乗り場があり、その周辺にはベンチや売店などがあります。

なお、湖の周りでは鯉のエサが販売され、それを湖に撒いて鯉を太らせるのが一般的なようです。

人文研究見聞録:蟠竜湖 [島根県]
人文研究見聞録:蟠竜湖 [島根県]

ボート乗り場から外れた道を進むと、ハイキングコースが現れます。

そのコースは密林と呼べるほど険しく、その雰囲気は まるでFF8の訓練施設を彷彿とさせます。

コースは非常に長く、途中には円形の休憩施設がありました。

人文研究見聞録:蟠竜湖 [島根県]
人文研究見聞録:蟠竜湖 [島根県]

さらに奥に進むと、展望台などがあるようですが、特別これといった見どころは無いようです。

なお、古くは「水神社」と呼ばれる神社があったとされています。

料金: 無料
住所: 島根県益田市高津町蟠竜湖
営業: 終日開放
交通: 益田駅(徒歩48分)、石見交通バス「蟠竜湖入口」下車
matapon
著者: matapon Twitter
「日本神話」を研究しながら日本全国を旅しています。旅先で発見した文化や歴史にまつわる情報をブログ記事まとめて紹介していきたいと思っています。少しでも読者の方々の参考になれば幸いです。