人文研究見聞録:率川神社 [奈良県]

奈良県奈良市にある率川神社(いさがわじんじゃ)です。

飛鳥時代に創建された奈良市最古の神社であり、祭神に姫蹈鞴五十鈴姫命・狭井大神・玉櫛姫命を祀っています。

大神神社の境外摂社であり、御子神を父母神が見守るように祀られていることから子守明神とも呼ばれているそうです。

また、毎年6月には三枝祭という古い伝統を持つ疫病除けの祭りが行われることでも知られています。


神社概要

由緒

由緒書によれば、推古元年(593年)に大三輪君白堤(おおみわのきみ しらつつみ)が勅命によって創祀したことに始まる神社で、奈良市最古の神社とされます。

大神神社の境外摂社で、正式には率川坐大神御子神社(いさがわにますおおみわみこじんじゃ)と言い、『延喜式神名帳』に「率川坐大神神御子神社 三座」と記載される式内小社であるとされています。

祭神は姫蹈鞴五十鈴姫命(ヒメタタライスズヒメ)・狭井大神(サイノオオカミ)・玉櫛姫命(タマクシヒメ)の三柱であり、父母神が御子神を見守るように鎮座していることから子守明神(こもりみょうじん)とも呼ばれており、安産・育児・息災延命の神様として篤い信仰を集めているそうです。

なお、由緒書による解説は以下の通りです。


率川神社(子守明神)

当神社は推古天皇元年(593年)、大三輪君白堤(おおみわのきみ しらつつみ)が勅命によって創祀した奈良市最古の神社であります。

父母神が御子神を両側から見守るようにして鎮座奉斎していることから子守明神と称えられ、安産・育児・息災延命の神様として篤い信仰を集めています。

例祭の三枝祭(さいくさのまつり)は御祭神に縁の深い笹百合(ささゆり、古名 さいくさ)の花で、白酒(しろき)・黒酒(くろき)の酒樽を飾って お祭りするところから付けられた名前であり、大宝令(701年)に国家の祭祀として定められている古式ゆかしい神事で、疫病除けの祭りとして今に受け継がれ「ゆりまつり」の名で知られています。

本殿は一間社春日造檜皮葺の建物三棟が東西一列に並び南面しており、近世初頭の社殿形式を伝えるものとして奈良県有形文化財に指定されています。

祭神

率川神社の祭神は以下の通りです。

・[左殿・御父神] 狭井大神(サイノオオカミ):三輪大物主神(大物主)と同神とされる
 → 『古事記』では、三輪大物主神とされる
 → 『先代旧事本紀』では、都味齒八重事代主神(ツミハヤエコトシロヌシ)とされる
 → 『ホツマツタヱ』では、ツミハ(コトシロヌシ)とされる
・[中殿・御子神] 姫蹈鞴五十鈴姫命(ヒメタタライスズヒメ):初代 神武天皇の皇后
 → 『古事記』では、三輪大物主神と勢夜陀多良比売(セヤダタラヒメ)の娘とされる
 → 『先代旧事本紀』では、都味齒八重事代主神と活玉依姫の娘とされる
 → 『ホツマツタヱ』では、ツミハ(コトシロヌシ)とタマクシヒメの娘とされる
・[右殿・御母神] 玉櫛姫命(タマクシヒメ):『日本書紀』一書に登場する神
 → 『古事記』では、と勢夜陀多良比売(セヤダタラヒメ)とされる
 → 『先代旧事本紀』では、活玉依姫(イクタマヨリヒメ)とされる
 → 『ホツマツタヱ』では、タマクシヒメとされる

境内社

率川阿波神社

人文研究見聞録:率川神社 [奈良県]

率川神社の境内社である率川阿波神社(いさがわあわじんじゃ)です。

奈良時代に創建された奈良市最古の恵比寿社とされる古社であり、祭神に事代主神(恵比寿神)を祀っています。

なお、当社の由緒・祭神は以下の通りです。

【由緒】

社伝によれば、宝亀年間(770~780年)に藤原是公(ふじわらこれきみ)が創祀したことに始まるとされ、平安期には『延喜式神名帳』に「率川阿波神社」として記載された式内小社であるとされます。

奈良市最古の恵比須社であり、当初は奈良市西城戸町に鎮座していたとされますが、時代と共に衰微して明治期には小祠を残すのみとなったそうです。

その後、大正9年(1920年)に率川神社の境内に社殿が建立され、昭和34年(1959年)に現在地に遷座したとされています。

【祭神】

・事代主神(コトシロヌシ):大国主の御子神で、恵比寿神としても祀られる
 → 当社では大物主大神の御子神であると説明される
 → 奈良市最古のえびすさんとされる

その他の境内社

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率川神社のその他の境内社は以下の通りです。

・住吉神社:上筒男命・中筒男命・底筒男命・息長帯比売命を祀る
・春日神社:武甕槌命・斎主命・天児屋根命・比売神を祀る

関連知識

三枝祭

人文研究見聞録:率川神社 [奈良県]

率川神社では、毎年6月17日に三枝祭(さいくさのまつり)という例祭が行われます。

この祭は、文武天皇の御代である大宝元年(701年)に制定された大宝令に規定された国家の祭祀を起源としており、大神神社で行われる鎮花祭と共に疫病除けを祈願する祭礼であるとされています。

また、この祭は「昔、(当社祭神の)姫蹈鞴五十鈴姫命(ヒメタタライスズヒメ)が住んでいた三輪山の麓の狭井川のほとりには笹百合の花が美しく咲き誇っており、その縁故によって酒罇に笹百合の花を飾る祭りを行うようになった」と言い伝えられており、現在では「ゆりまつり」の愛称で知られているそうです。

なお、この祭の供物には「罇(そん)・缶(ほとぎ)」と呼ばれる二種の酒樽が用いられ、「罇に白酒(しらき、清酒)、缶に黒酒(くろき、濁酒)を盛り、その酒罇の周囲を三輪山に咲く笹百合の花で飾り、楽の音とともに神前に供える」といった古式に則った様式で捧げられるとされています。

境内の見どころ

注連石

人文研究見聞録:率川神社 [奈良県]

率川神社の注連石です。

鳥居

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率川神社の鳥居です。

拝殿

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率川神社の拝殿です(ゆりまつり前日の様子)。

本殿

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率川神社の本殿です(ゆりまつり前日の様子)。

遥拝所

人文研究見聞録:率川神社 [奈良県]

率川神社にある大神神社の遥拝所です。

此処から本社の大神神社を遥拝することができます。

蛙石

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率川神社にある蛙石(かえるいし)です。

カエルに似た奇石であり、健康回復・旅行安全・金運アップなどの御利益を願って撫でると良いそうです。

なお、案内板による解説は以下の通りです。

【蛙石】

この石は、その形状から「カエル石」と言われています。蛙は一度にたくさん(1500個くらい)の卵を産むことから繁殖力・命の再生・豊富・裕福のシンボルとも云われています。

特に蛙は「カエル」という言葉の語呂が縁起が良いとされ、「お金がかえる」「幸せがかえる」「若かえる」「無事かえる」「貸したものがかえる」等々言われ、参拝者も健康回復・旅行安全・金運アップなどの御利益を願って、この石を撫で親しまれていることから「撫で蛙」とも呼ばれるようになりました。

花車

人文研究見聞録:率川神社 [奈良県]

率川神社にあった花車です。

ゆりまつり前日のささゆり奉献神事で使われる神輿であり、ゆりまつりの前に見ることができます。

料金: 無料
住所: 奈良県奈良市本子守町18(マップ
営業: 終日開放
交通: 近鉄奈良駅(徒歩6分)

公式サイト: http://isagawa-jinja.jp/
matapon
著者: matapon Twitter
「日本神話」を研究しながら日本全国を旅しています。旅先で発見した文化や歴史にまつわる情報をブログ記事まとめて紹介していきたいと思っています。少しでも読者の方々の参考になれば幸いです。