人文研究見聞録:袂石(礫石) [兵庫県]

兵庫県神戸市の有馬温泉地区にある袂石(たもといし)です。

有馬温泉の入口にあり、湯泉神社祭神にまつわる伝説を持つ巨石であるとされています。


袂石の概要

人文研究見聞録:袂石(礫石) [兵庫県]

袂石は、有馬温泉の入口(太閤橋の袂のバス停付近)に位置する巨石であり、注連縄が巻かれた状態で祀られています。

この巨石には湯泉神社にて祀られる熊野久須美命にまつわる伝説があり、これによれば「有馬の山に鷹狩に訪れた道場城主が山で出会った怪しい乙女に矢を放ったところ、突然 目がくらんで落馬した。実は乙女は熊野久須美命の化身であり、矢を放った道場城主を追い払うために袂に小石を入れており、そのときに投げた小石が今の袂石になった」と伝えられています。

また、上記の他にも「神が有馬の疫病を祓うために六甲山から投げ降ろした」「神の力の宿った石を触った手で患部を撫でると病が治る」という伝説や、「古代の巨石信仰の祭場」であったとする説など、諸説が唱えられているようです。

なお、案内板による解説は以下の通りです。


袂石(礫石)

昔、この北二里ほどのところにあった道場城(どうじょうじょう)の殿様が葦毛の馬に乗り、重藤の弓と白羽の矢を持ち、有馬の山で鷹狩をしたことがあった。山中で出会った美しい乙女を怪しく思った殿様は乙女に向かって矢を放った。その途端に殿様は目がくらんで落馬してしまったという。

実は乙女は湯泉神社に祀られる熊野久須美(くまのくすみ)の女神であった。矢を放たれて逃げながら、乙女は袂(たもと)に小石を入れて身構えたが、殿様が落馬して追って来られないことを知って、ここに袂の小石を捨てたとも、逃げながら乙女が殿様に小石を礫のように投げたともいわれる。

その小石が時と共に大きくなって この巨石となった。袂石(たもといし)とも礫石(つぶていし)とも呼ばれる この石には女神の力が宿っているという。この言い伝えから江戸時代には、葦毛の馬・重藤の弓・白羽の矢・鷹狩の姿で有馬を訪れると、神の怒りで山河が鳴動するほどの大嵐になると恐れられていた。

一説では、この巨石は有馬で流行った疫病を追い払おうと、大己貴(オオナムチ)の神が六甲山から投げ降ろしたものなので、この石をさすった手で体を撫でると、病や怪我が癒やされると信じられてきた。

小石が年と共に巨石に成長するという信仰は日本各地にあり、「さざれ石の巌となりて」という君が代の歌詞も同様の考えに基づいている。なお、『西摂大観』では乙女に矢を射たのは松永某と記されているが、道場城主なので正しくは松原氏であろう。

袂石のスペック

人文研究見聞録:袂石(礫石) [兵庫県]

袂石のスペックは以下の通りです。

・高さ:約5メートル
・周囲:約19メートル
・重さ:約130トン

袂石の諸説

人文研究見聞録:袂石(礫石) [兵庫県]

袂石の諸説は以下の通りです。

【袂石の伝説】

・有馬で鷹狩をしていた道場城主が、乙女姿で現れた熊野久須美命を射ようとした時に投げつけた小石が成長した
・大己貴(オオナムチ)の神が有馬で流行った疫病を追い払うために六甲山から巨石を投げ降ろした
・三輪明神が病魔退散のために武庫山(六甲山)から岩を投げて祈願した(上記と同一か?)

【袂石の語源】

・伝説で乙女姿の熊野久須美命が衣服の袂に入れていた小石であったことから
・太閤橋の袂にあることから

【その他】

・伝説より、礫石(つぶていし)とも呼ばれる
・伝説より、葦毛の馬・重藤の弓・白羽の矢・鷹狩の姿で有馬を訪れると大嵐になるといわれる
・袂石には女神の力が宿っており、石をさすった手で体を撫でると病や怪我が治ると信じられてきた
・古代の巨石信仰の磐座であるとする説がある

料金: 無料
住所: 兵庫県神戸市北区有馬町(マップ
営業: 終日開放
交通: 有馬温泉駅(徒歩2分)

公式サイト: http://www.arima-onsen.com/facility_info107.html
matapon
著者: matapon Twitter
「日本神話」を研究しながら日本全国を旅しています。旅先で発見した文化や歴史にまつわる情報をブログ記事まとめて紹介していきたいと思っています。少しでも読者の方々の参考になれば幸いです。