人文研究見聞録:湯泉神社(有馬町) [兵庫県]

兵庫県神戸市の有馬温泉地区にある湯泉神社(とうせんじんじゃ)です。

有馬温泉を発見した大己貴命・少彦名命を温泉守護の神として祀っており、子宝・子授けの神社として知られています。

また、境内から愛宕山に登ることができ、その山上には天狗岩と呼ばれる巨石が祀られています。


神社概要

由緒


由緒書によれば、有馬温泉を発見した大巳貴命(オオナムチ)少彦名命(スクナヒコナ)の二神を温泉守護の神として祀ったことに始まる神社であり、有馬温泉が日本最古の温泉場と云われることから、最古級の神社であるとされます。

歴史的には、崇神天皇7年(紀元前90年)には既に当社の存在が確認されており、『日本書紀』には第34代舒明天皇・第36代孝徳天皇の入湯が記録されていることで知られています。また、平安初期の『延喜式神名帳』には最高の格式である式内大社の一つに列せられていることから、古くから格式の高い神社であったという記録もあります。

平安後期の建久2年(1191年)に仁西上人が有馬温泉を再興してからは、熊野三山の影響を強く受けて熊野久須美命(クマノクスビ)が祭神に加えられ、以後「温泉鎮護三神」と称されるようになったとされます。なお、江戸初期からは明確に神仏習合の神社であったとされますが、明治の廃仏毀釈によって神仏習合に終止符を打ったそうです。

また、かつては愛宕山麓にある温泉寺の境内(石段下)に社殿があったとされますが、明治17年(1884年)に愛宕山中腹(現在地)に遷り、現在に至るとされています。

なお、由緒書による解説は以下の通りです。

湯泉神社御由緒略記


当社が日本で最も古い社の一つであるという事と、有馬が日本最古の温泉場である事とは起源を一にしているとい言ってよい。

六甲の山懐に有馬温泉が発見され、そして人々の営みが始まったと同時に当社が奉祀される事になったという推測は容易に成り立つが、それは一体いつの頃だったのだろうか。

神代の昔、大巳貴(オオナムチ)・少彦名(スクナヒコナ)の二神が当温泉を発見されたと伝え、この両命を温泉守護の神として祀ったのが当社の創祀である。

崇神天皇7年(紀元前90年)には既に「定置、神戸」とあって当社の存在が確認されている。舒明・孝徳の両帝は有馬に入湯あって日々当社に参拝をなされ、平癒の早からん事を祈られた。

延喜式神名帳には「湯泉神社(ゆのじんじゃ)・大・目次・新嘗」と最高格式の式内大社として登載されている。

安元2年(1176年)、後白河法皇は建春門院と共に来山され、当社に奉拝祈願されたが、供奉の按察資源資質は次の詠歌を広前に奉納した。

「めづらしき みゆきを三輪の 神ならば しるし有馬の いでゆなるべし」

建久2年(1191年)に仁西上人が有馬中興の由伝があり、以後 熊野三山の影響を強く受ける事となり、新たに熊野久須美命(クマノクスビ)を勧請併祀するに及び「温泉鎮護三神」と称されるようになった。

藤原定家の明月記に「建仁三年七月権現社に詣す」とあるが、その息子の為家も当社に詣で次の歌を詠んだ。

「有馬山 君の御幸もとしふりぬ たのむしるしも 神もあらはせ」

江戸の初期からは明確に神仏習合の存在となり、真言の社寺の不即不離の関係も明治維新の廃仏毀釈により、終止符を打つことになった。

現在の本殿・拝殿は寛政10年(1798年)の再建になるものだが、狭隘な旧社地(石段下)から愛宕山々複を開拓整地した現社地に明治17年(1884年)に遷座され、現在に至っている。

祭神


湯泉神社の祭神は以下の通りです。

【主祭神】

大巳貴命(オオナムチ)国造りの神であり、大国主という名でも知られる(出雲大社の主祭神として有名)
・少彦名命(スクナヒコナ):オオナムチと共に国造りを成した神

【配祀】

・熊野久須美命(クマノクスビ):スサノオがアマテラスとの誓約の際に生んだ男神の一柱

関連社


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天津神社
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子安堂
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妙見堂

湯泉神社の関連社は以下の通りです。

【境内摂社】

・天津神社(南丿小宮):天照大神・春日大神・八幡大神を祀る
・国津神社(北丿小宮):豊受大神・安徳天皇・熊野十二神を祀る
・金刀比羅神社:大物主命・稲倉魂命・軻遇突知命を祀る
・胸形神社(弁天社):市寸島姫命・多岐都姫命・多紀理比賣命を祀る

【境外摂社】

・水天神社(神地・御旅所):大巳貴命・安徳天皇・熊野十二神を祀る

【末社】

・吉高神社

【御堂】

・子安堂
・妙見堂

関連知識

有馬温泉の伝説(有馬の二神と三羽烏)


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神代の昔、大己貴命(オオナムチ)少彦名命(スクナヒコナ)の二神は、民を病から救うために薬草を探して旅をしていた。

二神が有馬を訪れた際、傷付いた三羽の烏(カラス)が赤い水溜まりで水浴びをしており、数日後に烏の傷が癒えた様子を見て その水溜り調べたところ、傷を癒やす温泉だとわかった。

これが有馬温泉の発見であり、後に三羽烏と二神は有馬の守護神として崇められることになった。

参考サイト:有馬の二神と三羽烏(元湯龍泉閣)湯泉神社公式

境内の見どころ

鳥居


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湯泉神社の鳥居です。

石段


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湯泉神社の石段です。

境内


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湯泉神社の境内です。

大黒像


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湯泉神社にある大黒像です。

主祭神のオオナムチは、大黒様と呼ばれて縁結びの神とされています。

拝殿


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湯泉神社の拝殿です。

寛政10年(1798年)の再建とされています。

三羽烏の彫刻


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湯泉神社の拝殿には三羽烏が刻まれています。

子宝御守 玉鉾さま・阿福さま


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湯泉神社の子宝の御守である玉鉾さま・阿福さまです。

古くから当社に伝わる御守であり、玉鉾さまは女性が、阿福さまは男性が持って、夫婦で祈願することとされています。

料金: 無料
住所: 兵庫県神戸市 北区有馬町1908(マップ
営業: 終日開放
交通: 有馬温泉駅(徒歩10分)

公式サイト:http://www.tousen.or.jp/
matapon
著者: matapon Twitter
「日本神話」を研究しながら日本全国を旅しています。旅先で発見した文化や歴史にまつわる情報をブログ記事まとめて紹介していきたいと思っています。少しでも読者の方々の参考になれば幸いです。