人文研究見聞録:人麿神社(柿本人丸神社) [奈良県]

奈良県橿原市地黄町にある人麿神社(ひとまろじんじゃ)です。

飛鳥時代の歌聖・柿本人麻呂を祀る神社であり、毎年5月には「すすつけ祭」が行われることでも知られています。


神社概要

由緒

案内板によれば、創建年代は不詳とされるものの、奈良県葛城市新庄町の柿本神社から分祀されたと伝えられ、江戸時代以降は「人丸大明神社」「柿本人麻呂大明神社」と称していたとされています(境内の石碑には「柿本人丸神社」とある)。

なお、神社の鎮座する「地黄町(じおちょう)」という地名は、漢方の薬草・地黄(ジオウ)を盛んに作っていたことに由来すると言われています。

祭神

人文研究見聞録:人麿神社(柿本人丸神社) [奈良県]
柿本人麻呂

人麿神社の祭神は以下の通りです。

主祭神

・柿本人麻呂朝臣(かきのもとひとまろ):飛鳥~奈良時代の宮廷歌人で、歌聖とも称される
 → 史書には具体名が登場しないため、主に『万葉集』に載せられた和歌から人物像が推測されている
  ⇒ 哲学者・梅原猛の『水底の歌』では、石見国の「鴨嶋」という小島に流罪となったと推測されている
  ⇒ 境内には「秋山の 黄葉を茂み 迷ひぬる 妹を求めむ 山道知らずも」と刻まれた歌碑がある

すすつけ祭

人文研究見聞録:人麿神社(柿本人丸神社) [奈良県]

人麿神社では、毎年5月4日に通称「すすつけ祭(または「すみつけ祭」)」と呼ばれる祭礼が行われます。

この祭礼は野神祭の1つとされ、地域の人々の無病息災や豊作を祈願し、村の子供たちが裸になって境内を駆け回り、真っ黒になるまで墨の付け合いをするとされています。子供たちの全身が真っ黒になればなるほど、豊作になると云われているそうです。

なお、古くは「ノガミさん」「ノグッツアン」と呼ばれ、県の無形民俗文化財に指定されているとされています。

境内の見どころ

鳥居

人文研究見聞録:人麿神社(柿本人丸神社) [奈良県]

人麿神社の鳥居です。

神木

人文研究見聞録:人麿神社(柿本人丸神社) [奈良県]

人麿神社の神木です。

拝殿

人文研究見聞録:人麿神社(柿本人丸神社) [奈良県]

人麿神社の拝殿です。

本殿

人文研究見聞録:人麿神社(柿本人丸神社) [奈良県]

人麿神社の本殿です。

檜皮葺の一間社隅木入春日造りの小社殿であり、康永四年(1345年)の造立とされています(国の重要文化財)。

桜池の小祠

人文研究見聞録:人麿神社(柿本人丸神社) [奈良県]

人麿神社の付近の桜池のほとりには小祠があります。

これについて、江戸時代の地誌である『西国三十三所名所図会』では「玉津島明神(衣通姫尊)の祠」と記され、昭和期の地名辞典である『奈良県の地名』には「若宮社」と記されているそうです。

※衣通姫尊(そとおりひめのみこと):第19代允恭天皇の后であり、和歌の名手とされ、住吉明神、柿本人麻呂と共に「和歌三神」と称される

料金: 無料
住所: 奈良県橿原市地黄町445
営業: 終日開放
交通: 大和八木駅(徒歩11分)

公式サイト: http://www.city.kashihara.nara.jp/kankou/own_kankou/kankou/spot/hitomaro.html
matapon
著者: matapon Twitter
「日本神話」を研究しながら日本全国を旅しています。旅先で発見した文化や歴史にまつわる情報をブログ記事まとめて紹介していきたいと思っています。少しでも読者の方々の参考になれば幸いです。