人文研究見聞録:湯神社・出雲崗神社 [愛媛県]

愛媛県松山市冠山にある湯神社(ゆじんじゃ)です。

道後温泉の冠山に位置する神社であり、相殿に出雲崗神社(いずものおかじんじゃ)を祀っています。

創祀は古く、初めは冠山(出雲崗)に出雲崗神社が鎮座しており、湯神社が創建された後に合祀したと云われています。

いずれにしても紀元前後の創建とされており、道後温泉の歴史と併せて古い神社であるとされています。


神社概要

創建由緒

出雲崗神社

社伝によれば、第7代孝霊天皇の時代(紀元前3世紀頃)に現在地に創建された古社であり、素盞嗚尊・稲田姫命・大山積命・茅野姫命の四柱の神を祀り、四所大明神とも称していたとされています。

なお、平安時代には『延喜式』神名帳にて「伊予国温泉郡 出雲崗神社」として記載され、式内社に列しています。

湯神社

社伝によれば、第12代景行天皇の時代(1世紀頃)に天皇が皇后・八坂入姫と共に道後温泉に行幸した際、鷺谷の大禅寺の前に創建したとされ、祭神に道後温泉を開いたオオナムチとスクナヒコナの二神を祀ったと云われています。なお、本来は温泉自体を祀る神社であったとも云われているようです。

その後、第34代舒明天皇の行幸の際、勅命によって社殿を再建したそうです。そして、平安時代の『延喜式』神名帳には「伊予国温泉郡 湯神社」と記載され、式内社に列したとされています。

しかし、大永年間(1521~1528年)に地震で温泉が埋没し、その影響で湯神社の社殿も大破したとされます。そのため、河野通直によって出雲崗神社に合祀され、湯月大明神、四社大明神などと称されるようになったそうです。

その後、宝永4年(1707年)の地震により出湯が停止した際には湯神社で出湯の祈祷が行われたとされ、その結果、再び温泉が湧き出すようになったことから、湯神社はその功によって相殿から境内別社とされたそうです。

そして、明治4年(1871年)に湯神社に出雲崗神社を合祀するという現在の形式となったとされています。

祭神

人文研究見聞録:湯神社・出雲崗神社 [愛媛県]
オオクニヌシとスクナヒコナ

湯神社の現在の祭神は以下の通りです。

主祭神(湯神社祭神)

・大己貴命(オオナムチ):大国主命の別称、国造りの神で道後温泉を発見したとされる(『伊予国風土記』による)
・少彦名命(スクナヒコナ):国造りの神で道後温泉を発見したとされる(『伊予国風土記』による)

相殿神(出雲崗神社祭神)

・素盞嗚命(スサノオ):出雲の祖神とされる
・稻田姫命(クシナダヒメ):スサノオの正妻に当たる神

境内社

児守社

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湯神社の境内社・児守社(こもりしゃ)です。

祭神に神大市姫命(カムオオイチヒメ)、鎭疫神、河野通広を祀っています。

古くは松山城東麓にあったとされ、松山城築城の際に湯神社の末社・河野霊神に合祀されたとされています。

なお、河野霊神は、時宗(じしゅう)の開祖である一遍 が父・河野通広を祀るために建立したものであり、遊行上人が巡教した際には必ず参拝を行い、その都度領主は社殿を造営整備したとされています。

また、鎮疫神は、江戸時代後期(1859年)に悪病が流行したため、その鎮疫のために勧請されたとされています。

中嶋神社

人文研究見聞録:湯神社・出雲崗神社 [愛媛県]

湯神社の境内社・中嶋神社(なかしまじんじゃ)です。

祭神に田道間守命(タジマモリ)を祀っており、昭和32年(1957年)3月に四国四県の製菓業者によって、兵庫県豊岡市にある製菓・柑橘の祖神・中嶋神社の分霊を勧請し、その四国分社として創建されたとされています。

その他の境内社

人文研究見聞録:湯神社・出雲崗神社 [愛媛県]

本殿の両脇に下記の境内が鎮座しています。

・三穂社:事代主命(コトシロヌシ)、蛭兒命(ヒルコ)を祀る
・八幡若宮社:大鷦鷯尊(おおさざきのみこと、仁徳天皇)を祀る

境内の見どころ

鳥居

人文研究見聞録:湯神社・出雲崗神社 [愛媛県]

湯神社の鳥居は縄鳥居となっています。

小さな祠

人文研究見聞録:湯神社・出雲崗神社 [愛媛県]
人文研究見聞録:湯神社・出雲崗神社 [愛媛県]

湯神社の石段付近には小さな祠が祀られています。

漢字の刻まれた謎の石

人文研究見聞録:湯神社・出雲崗神社 [愛媛県]

湯神社の石段には漢字の様な文字が彫られた謎の石があります。

」と書いてあるように見えますが、この石は一体何なのでしょうか?

料金: 無料
住所: 愛媛県松山市道後湯之町4-10(マップ
営業: 終日開放
交通: 道後温泉駅(徒歩3分)

公式サイト: http://yu.mydns.jp/
matapon
著者: matapon Twitter
「日本神話」を研究しながら日本全国を旅しています。旅先で発見した文化や歴史にまつわる情報をブログ記事まとめて紹介していきたいと思っています。少しでも読者の方々の参考になれば幸いです。