人文研究見聞録:祇園祭2015 [京都府]

京都の祇園祭に参加してきたので、その様子をレポートしたいと思います。

祇園祭の概要

祇園祭とは?

人文研究見聞録:祇園祭2015 [京都府]

祇園祭(ぎおんまつり)とは、京都の八坂神社(祇園社)の祭礼です。貞観年間(9世紀)より続く祭であると云われています。

明治までは「祇園御霊会」と呼ばれており、平安時代に起こった疫病の流行を怨霊の祟りと捉える「御霊信仰」の思想に基づいて、怨霊を鎮めて祀り守護神とする「御霊会(ごりょうえ)」を起源とする祭礼であるとされています。

毎年7月に1ヵ月かけて行われる祭りであり、八坂神社内では神楽や舞が奉納され、神幸行列や花傘巡幸などが行われます。また、7月17日7月24日には、祇園周辺で山鉾巡行が行われ、日本三大祭また京都三大祭の一つにも数えられる全国的にも有名な祭りとして知られています。

なお、祭行事については、八坂神社が主催するもの山鉾町が主催するものに管轄が分かれるそうです。

八坂神社とは?

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八坂神社(やさかじんじゃ)とは、京都市東山区祇園町にある神社です。通称「祇園さん」また「八坂さん」と呼ばれています。

祭神に「素戔嗚尊(スサノオ)」を祀っていますが、明治時代の神仏分離令以前はスサノオと同一とされる「牛頭天王(ゴズテンノウ)」を主祭神としており、この神が仏教の聖地である祇園精舎の守護神とされることから、「祇園神」とも呼ばれていたそうです。

そのため、かつては祇園神を祀る社として「祇園社」と呼ばれており、祇園祭の名称も このことが由来しているとされています。

詳しくはこちらの記事を参照:【八坂神社】

山鉾とは?

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山鉾(やまぼこ)とは、山車の一種であり、山形の台の上に長刀(なぎなた)などを立てたものを指します。

神の依り代とされ、祇園祭では京の町を巡って町中の厄を集めて行くという役目があるとされています。

そのため、巡行が終わった山鉾は集めた厄を溜めないように すぐに解体されるんだそうです。

なお、宵山期間中(14、15、16日)には各山鉾で御朱印の授与が行われ、また山鉾によっては上ることもできます。


祇園祭のレポート

祇園祭の見どころ

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祇園祭は7月中に1ヵ月間かけて行われる祭りですが、主な見どころは「前祭(さきまつり)」と「後祭(あとまつり)」と呼ばれる時期だと思われます。

一般的には宵山(よいやま、前夜祭)が見どころとされ、提灯で飾られた山鉾を見ながら、歩行者天国で祭りを楽しむことができます。ただし、物凄い混雑する祭りなので、それなりに人混みを覚悟する必要があります。

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宵山

また、祭行事については色々ありますが、八坂神社主催のものと 山鉾町主催のものに大別され、さらに平日も挟むため全て見るのは結構大変です。

よって、独断と偏見により、おすすめの見どころを掻い摘んで紹介したいと思います。

個人的見解による見どころ

・7月14日~16日宵山期間
・7月16日の八坂神社による石見神楽・伝統芸能奉納
・7月17日の山鉾町による山鉾巡行(前祭)
・7月24日の山鉾町による山鉾巡行(後祭)
・7月24日の八坂神社による鷺舞奉納

山鉾巡行(前祭)

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前祭の山鉾巡行は山鉾町主催の祭行事です。7月17日の9:00~12:00頃にかけて行われます。

2015年の前祭は台風接近のため、当日まで巡行が見合されるなどあまり振るわない状況でした。

そのため、石見神楽などは見れず、山鉾巡行のみの見学に終わりました。

山鉾は、烏丸御池駅 ⇔ 烏丸駅を鴨川沿いに巡行します。予め巡行ルートを把握して待機するのがおススメです。

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長刀鉾
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菊水鉾
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鶏鉾

なお、2015年の前祭の山鉾は以下の通りです。

2015年の前祭の山鉾

・長刀鉾(なぎなたほこ):毎年先頭を行く鉾。唯一、生稚児が乗る
・孟宗山(もうそうやま):古代中国の「孟宗」の故事を再現した山。別名「筍山」とも
・芦刈山(あしかりやま):大和物語の「芦刈」を再現した山。山鉾最古の御神体衣装を保有する
・伯牙山(はくがやま):古代中国の琴の名手「伯牙絶絃」を再現した山
・函谷鉾(かんこほこ):毎年5番目に行く鉾。古代中国の「孟嘗君」の故事を再現する
・油天神山(あぶらてんじんやま):社殿に天神様こと菅原道真公を祀る山
・四条傘鉾(しじょうかさほこ):無形民族文化財の「子供棒振り踊り」を奉納する鉾
・占出山(うらでやま):応神天皇の母・神功皇后を祀る安産の山
・月鉾(つきほこ):夜と水徳の神とする月読尊にちなんだ鉾
・蟷螂山(とうろうやま):からくり仕掛けの「大かまきり」を乗せた山。古代中国の君子の故事にちなむ
・木賊山(とくさやま):謡曲「木賊」をテーマにしている山
・山伏山(やまぶしやま):山伏の姿をした御神体を乗せる山
・菊水鉾(きくすいほこ):古くからあった井戸「菊水井」にちなむ鉾。16花弁の菊を飾る
・郭巨山(かっきょやま):古代中国の「郭巨の得釜」という故事にちなむ山
・綾傘鉾(あやがさほこ):大きな傘と棒振り囃子の行列で構成される山
・太子山(たいしやま):聖徳太子が杉の巨木で六角堂を建てたという故事にちなむ
・鶏鉾(にわとりほこ):海上の守護神である住吉明神を祀る鉾。鶏の卵が諌鼓の中にあるとも
・白楽天山(はくらくてんやま):唐の詩人「白楽天」にちなむ山
・保昌山(ほうしょうやま):和泉式部の恋物語をテーマにした山。縁結びのご利益とされる
・霰天神山(あられてんじんやま):中世、京で起こった大火を鎮めた霰と天神像にちなむ
・放下鉾(ほうかほこ):毎年21番目に行く鉾。バグダッドとフクロウを描く胴掛けが有名
・岩戸山(いわとやま):毎年22番目に行く山。日本神話の「国産み」と「天岩戸」にちなむ
・船鉾(ふねほこ):毎年23番目に行く鉾。日本書紀の「神功皇后の新羅出船」をテーマにする

山鉾巡行(後祭)

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後祭の山鉾巡行は山鉾町主催の祭行事です。7月24日の9:30~12:00頃にかけて行われます。

2015年の後祭は天候も良く、順調に行われました。

巡行ルートは前祭と同様ですが、進路は逆向きになります。予め巡行ルートを把握して待機するのがおススメです。

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鯉山
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浄妙山
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大船鉾

なお、2015年の後祭の山鉾は以下の通りです。

2015年の後祭の山鉾

・橋弁慶山(はしべんけいやま):後祭の先頭を行く山。弁慶と牛若丸の五条大橋での対面を再現
・北観音山(きたかんのんやま):後祭の2番目を行く山。「上り観音山」とも呼ばれる
・役行者山(えんのぎょうじゃやま):修験道の開祖・役小角が一言主を使って橋を建てた説話にちなむ
・八幡山(はちまんやま):石清水八幡宮を八幡宮を祀る山
・鈴鹿山(すずかやま):伊勢国の鈴鹿山で悪鬼を退治した鈴鹿御前の説話にちなむ
・南観音山(みなみかんのんやま):北観音山に対応し、「下り観音山」とも呼ばれる
・鯉山(こいやま):「登竜門」の伝説にちなむ山。ダビデ王の描かれた胴掛けが有名
・黒主山(くろぬしやま):謡曲「志賀」にちなむ山
・浄妙山(じょうみょうやま):平家物語に登場する「宇治川橋の合戦」をテーマにした山
・大船鉾(おおふねほこ):後祭りの最後に行く山。神功皇后と磯良・住吉・鹿島の三神を祀る

後祭の山鉾巡行の様子は、こちらのビデオで見ることができます。ぜひご覧ください。



花傘巡行・還幸祭

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花傘巡行・還幸祭は、八坂神社主催で行われる後祭の祭行事です。

7月24日に行われ、花傘巡幸は10:00~12:00、還幸祭は、17:00~23:30頃まで行われます。

花傘巡行は、山鉾巡行と時間が重複するため、両方見るには八坂神社付近で待機するのが無難だと思われます。

花傘巡行では、八坂神社の伝統舞踊である鷺舞(さぎまい)が奉納されます。

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鷺舞

巡行から戻ってくると舞殿でも奉納が行われるようなので、12:00頃には舞殿前に待機するのが良いかも知れません。なお、24日には獅子舞などの伝統芸能の奉納も行われます。

そして、17:00頃には境内に還幸祭の準備が始まり、その後 神社を出発します。

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還幸祭

こちらもなかなか興味深い神事ですよ。

なお、夜までの長時間行われるので時間に余裕をもって参加するのが無難です。

八坂神社のアクセス

料金: 無料
住所: 京都府京都市東山区祇園町北側625番地
営業: 終日開放
交通: 祇園四条駅(徒歩9分)、河原町駅(徒歩12分)

公式サイト: http://www.yasaka-jinja.or.jp/
matapon
著者: matapon Twitter
「日本神話」を研究しながら日本全国を旅しています。旅先で発見した文化や歴史にまつわる情報をブログ記事まとめて紹介していきたいと思っています。少しでも読者の方々の参考になれば幸いです。